第10話

幾夏は少し間をおいて話した。

「はおはおちゃん、あの例の事件で行方不明なってから………」


八音は驚情で言った。

「いきなり消えたもんね。死んじゃったかと思った。でも、よかったじゃない。幾夏のところに入ったのは偶然かもしれないけど、ラッキーだったと思う」


幾夏は小さくうなずきながら答えた。

「ご飯は食べるんだけど、今、全然喋らないんだよ。歌うことはできるけど………」


八音は優しく返した。

「いいんじゃないの。喋りたくなければ喋らなくていいと思う」


幾夏は肩をすくめて笑った。

「無理に話さなくても良き笑」


八音はふと問いかける。

「家は?」


幾夏は答えた。

「東京に二人部屋」


八音は少し羨ましそうに言った。

「マンションかあ。いいなあ」


幾夏は軽口をたたいた。

「二人ともタレント枠だから」


八音は確認するように訊いた。

「あの人の意見だったんでしょ?一般的な法的根拠のある事業形態に移行しろっていう?」


幾夏は柔らかく応じた。

「合法的組織事業形態(笑)」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る