第9話

幾夏は少し微笑みながら言った。

「それで千世に、小説書くんだったらうちの一般の会社になってる組織のルートでなんとかできるかもって話したら、『お願いします』って言われたんだよ」


八音は興味深そうに顔を向けた。

「どんな小説なの?」


幾夏は無表情で答える。

「百合」


八音は思わず笑みを浮かべた。

「かわいい」


幾夏はちょっとからかうように続けた。

「ケモミミが好きで、イケメンとムキムキは嫌いなんだって」


八音は笑いをこらえきれず、軽く吹き出した。

「(笑)」


部屋の静けさの中に、ふたりの笑い声だけが柔らかく響いていった。


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