第7話

幾夏は湯呑を置き、少しだけ息をついた。

「そのドールの中に、千世と、はおはおちゃんがいた」


八音は驚きを押し殺すように静かに頷く。

「なるほど」


「2人とも一応無事だったみたいなんだ。組閥の許可を得ようと思ってる」


「二人とも無事だったの?何もされてなかったの?」

八音の声には心配が滲んでいた。


「それは大丈夫みたい。傷物にしたら意味ないからね」

幾夏は肩をすくめるように言った。


「それでいいんじゃない?買取希望なんでしょ、相手は」


「うん。でも、私たちが親代わりにならなきゃいけないんだよ。日本語もあんまり喋れないし、身元の引受人を探さなきゃいけない。国籍もないから、その辺がどうしようかって思ってるけど、身柄の安全は一応確保した」


「学校とかだったら、うちの学校なら大丈夫だと思うよ。もしよかったら、私が校長先生に頼んでみる」


「幾夏、そっちで面倒見るっていうなら、戸籍もそっちに入れたほうがいいんじゃない?」


「家族、増えすぎなんだよね(笑)」


二人はふっと笑い合ったが、その目はどこか遠くを見つめていた。

そして再び静かな道場に、湯気だけが揺れていた。

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