第3話

「この前、友達に言われたんだ。今からタバコ吸い始めたら、たぶん50代くらいで肺がんだよ、って」


 八音が横目で見る。

「その友達、お医者さんなの?」

「医者の卵って言ってたかな」

「それなら、そうなんじゃない」


 幾夏はタバコを一本抜きながら笑った。

「だから今日、この一本吸って終わりにしようと思って来たんだよ」

「何、タバコ吸いに来ただけなの」

「最後に一本吸って終わりにしようと思って、いい場所探しに来たんだ」


 八音は呆れたように前を向いた。

「学校に来ても、ダメだって分かってるでしょ。道場だってダメに決まってるじゃん」

「だと思ったから、やめるのやめたんだ」

「……わけわかんないんだけど」


 二人の間に、思わず小さな笑い声がこぼれた。

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