第2話

 道場に向かう途中、幾夏がポケットから小さな箱を取り出した。


「……吸ってもいい?」


 銀色のケースの中にはタバコが数本並んでいる。幾何は一本を指先で軽く転がしたが、八音は口元だけで笑った。


「普通、学校は禁煙」


 その声に咎める色はない。ただ、昔からの調子で言っただけだった。


 幾夏は肩をすくめ、「はいはい」と短く答えると、タバコをケースに戻し、またポケットにしまった。


 二人はそのまま歩き、やがて道場の前に立った。


「……最近、どう?」

「んー……」


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