第9話 注目

 営業を始めて5日目の朝、俺はある異変を感じ取りカーテンを開けた。2階の窓から外を眺めてみると、家の周りの空き地には30台以上の車が止まっており、店の前には50人ほどの行列ができていた。


 まだ店が開く1時間前だというのに。道路の方には停める場所がなく彷徨っている車が何台か見えた。


「ええー、これみんなお客さんか? どうなってんだ?」


 俺は急いで身支度をすると、少し早いが店を開ける事にした。このままじゃ道路の通行を妨げてしまうだろう。


 俺は古民家を飛び出し、店に向かった。


「おはようございます。あの、すみません、最大何箱まで買えるんですか?」


 店に入ろうとした時、1番先頭に並んでいた若い男性客に俺は声をかけられた。


「何箱?」


「はい」


 俺は一瞬で思考を巡らせる。個数の制限は確かに考えていなかった。確かに、これだけのお客さんが来てくれているのに、販売量を無制限にしてしまい、売り切れてしまったら後に来るお客さんが可哀想だろう。


 魔法弾は10万発以上作ってはいるが、全てを一気に売り捌く気は無かった。


 継続的に商売をしていくためには毎日店を開けることが必要だし、弾が一人に多く渡ってしまったら問題だと思っていたからだ。


「たくさんの方に使用してもらいたいので2箱まででお願いします」


「わかりました」


 先頭で並んでいた男性客はややがっかりした様子だったが納得はしてくれたみたいだ。


 店を開くと戦争のように慌ただしい時間が始まった。売っても売っても列が途切れなかった。


 ただ、思っていたよりも試し撃ちをする人が少なかったのと、みんな2箱を10万円で買っていくためお釣りが出ないのが助かった。


 それぞれの客が競うように弾を買って行き、わずか2時間ほどで300箱以上売れてしまった。


 午前10時、やっと列に並んでいる人が少なくなったため、俺は1番最後に並んでいた人に声をかけた。


「あの、すみません。どこでこの店のことを知ったんですか?」 


「えっ? 知らないんですか? Youmoveでバズってましたよ。人気配信者のリクトが配信したので、ほら、この動画……」


 Youmoveとは誰でも動画を投稿したり生配信したりすることができる動画サイトだ。探索者の中に、ダンジョン配信をする人がいることは前から知ってはいた。


 女性が見せてくれた映像には一昨日、弾を買っていった男性が写っていた。


「今まで倒すことが出来なかったB級モンスターのエアウルフが1発です。信じられません!! これは、我々のような非能力者の探索者にとってまさしく奇跡の弾丸ですよ!!」


 リクトと呼ばれた男は興奮した様子で9ミリの魔法弾を使っていく。B級モンスターが次々と撃破されていく。このリクトという人、かなり銃の扱いが上手い。モンスターの弱点に確実に弾を当てていく。


 それにモンスターの苦手属性を考えて効果的に魔法弾を使っている。リクトの無駄のない動きと魔法弾の効果的な使い方に俺は感心してしまった。


「このリクトさんは元自衛隊の人で、射撃スキルが凄いんです!! 顔もイケメンだし、今大人気なんですよ!」


 女性はうっとりする目でスマホの中の男を見つめている。


「確かに……凄い腕ですね……」


 自分が魔法を使える探索者であるため、銃器のみでダンジョン攻略に挑む探索者たちの動画は見たことは無かった。リクトの華麗な戦い方に俺も夢中で動画を見てしまう。


「なんと、46階に到達してしまいました。これは非能力者達だけのパーティが到達した階層としては日本最高記録です。この弾丸の威力がとてつもないものだと証明されたと思います。皆さんも是非購入してみてください。ただ、個人で経営している店なので、一気に押しかけすぎると迷惑をかけてしまうかもしれません。周りの人のことも考えて買い占め等も控えましょう」


(おおー。リクトさんってめちゃくちゃいい人だな。俺のことまでちゃんと気遣うコメントもしてくれるなんて……)


 リクトの最後のコメントはすごく好印象だった。今度来てくれたらお礼を言いつつ握手してもらおう。


 動画の再生数はわずか1日で20万再生を超えていた。そりゃお客さんが増えるわけだ。


 結局この日は300人以上の客が訪れ、9ミリ弾が500箱以上売れた。1日の売上も2500万円を超えた。


 妹を救うために2億以上の金を貯めようとしてる俺にとっては非常に好調だった。


「でも、1日500箱は売りすぎだよな。どうしよう……」


 このペースで売っていったら、あっという間に在庫が底をついてしまい経営が成り立たなくなってしまう。俺が一ヶ月で生産した魔法弾は225000発、箱にすると4500箱しか無かった。


 今日500箱は売れたから後4000箱しか残っていない。俺のオーラ量じゃ一日に60箱作るのが精一杯だ。このままのペースでお客さんが押し寄せたら9日後には店を閉めなくてはいけなくなる。


 妹を助けるためには早急に金が必要だ。いつオークションが開かれるかわからない。しかし、店がオープンしてすぐに売るものが無くなってしまうのも問題だろう。


 俺は金を稼ぐことと、店を軌道に乗せる事を両立させるために思考を巡らせた。その結果、1日300箱の販売を行なっていくことに決めた。


 この数ならば18日間は営業を続ける事が出来るし、18日後には2億以上の金を手に入れることができる。もちろん、エリクサーがオークションに出品された場合はすぐに残りの弾を売り切り、金に変えるつもりだ。


 3日前に投稿してから一度も見ていなかったがいつの間にかフォロワーが3000まで増えていて驚いたリクトさんに感謝だ。


 

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やがて最強に至る弾丸付与術士の成り上がり 彼方 @neroma

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