ツン 50% デレ 50%
夕方の商店街。
並んで歩く俺とツン子の影が、地面に長く伸びていた。
「……なに、そんなに近寄ってきて」
「いや、人混みだから」
「ふーん。じゃあ、しょうがないから……手、繋いであげてもいいけど?」
「あげてもって……ほら」
自然に差し出した手をツン子は一瞬だけためらってから、するりと指を絡めてきた。
(……指、長くて細いな)
触れ合った瞬間、指先からぞくりと熱が伝わる。
「……なに?変な顔して」
「いや……指、冷たいなって」
「あ、あんたのが熱すぎるのよ! 変態」
そう言いながらも、彼女の親指がそっと俺の指の付け根をなぞる。わざとじゃない、なんて顔して。
(やば……それ、反則だって)
俺の指もつい彼女の指の隙間をなぞってしまう。
「……っ、なに、それ……くすぐったい」
「ごめん。でも……気持ちいいだろ?」
「……っ、し、知らない!」
頬を染めながらも、彼女の指先は少しだけ強く絡んできた。
ぎゅっ――と握るたびに、手のひらの柔らかさと、指の温もりが直に伝わってくる。
(……手繋ぐだけで、なんでこんなにエロいんだ)
歩くたびに指と指が擦れて、そのたびに彼女の呼吸がほんの少しだけ上ずる。
「……ねえ。人多いからって言い訳しなきゃ、こんなの絶対しないからね」
「そう? 俺はずっとこうしてたいけど」
「……ばか」
信号待ちで立ち止まったとき、彼女の小指が俺の指にくいっと絡む。
(それ……誘ってるよな)
彼女の横顔は夕暮れの光に染まっていて――
その視線は繋いだ手よりも熱かった。
信号が青に変わっても、しばらく歩き出せなかった。
(やばい、指……柔らかすぎ)
握った手の中、ツン子の指先がゆっくりと俺の手のひらをフニフニ押してくる。
軽く押されるたびに皮膚の奥まで柔らかい感触が染み込んで、背筋にゾクリとくる。
「……なに? さっきから妙に手のひらいじってるけど」
「別に……落ち着くから」
そう言いながら今度は俺の人差し指の付け根をクニクニと揉むように撫でる。そこ、妙に敏感なのわかっててやってるだろ……。
「……っ、そこ……」
「なに? 痛いの?」
「いや……気持ちよすぎる」
「……ばか」
口ではそう言いつつ、指先は止まらない。
しかもいつの間にか、お互いの手のひらがうっすらと汗ばんできて――じっとりとした温もりが、互いの肌を溶かすみたいに混じり合う。
(……やばい、体温、完全にシンクロしてる)
ぎゅっと握ると彼女の体温が一気に流れ込んできて、逆に俺の熱も吸い取られていくみたいで、もう離せない。
歩きながら指同士が何度も何度も擦れ合って、皮膚がわずかに引っかかる感触と、ぬるっとした汗の膜が絡み合う。
「……ねえ」
「ん?」
「こういうの……人前でしてるって思うと、変な感じ」
「じゃあ、やめる?」
「……やめない。もっと、指……」
その声は、わずかに掠れて甘かった。
俺たちの歩幅はもうデートというより、互いの指先を味わうためだけにゆっくりになっていた。
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