寿司屋でデリバリーの話

ムスメは美味しいものを食べたいとオジに連絡をしてきた。

オジの不発弾は依然として抱えたままだが、それは最優先というわけでもなくなっていた。

ムスメとの話は非日常的で刺激的で楽しいのだ。

接待で使ったことのある回らない寿司屋を予約した。

ムスメは回らない寿司は初めてだと言って喜んだ。

顧客との食事でも寿司は定番では?と聞いたが、そもそも食事にはあまり行かないらしい。

行っても顔合わせで軽いお茶程度なのだと言う。


当日。寿司屋で合流。

刺身と焼き物を適当に、と頼んだ。日本酒も忘れない。

小量でいろいろ食べられて、それぞれに美味しい。

ムスメは感激していた。年齢相応の顔だった。

年齢の割には様々な経験をしているようだが、極めて偏っているのだ。


仕事の話になった。

前回の顧客凸事件もあって個人での活動には危険性を感じたようだ。

ムスメはデリバリーヘルスでの勤務をはじめていた。

当然、正攻法では未成年はそういった業種で仕事はできない。

未成年者の就労には厳しい制限がある。

ましてや風俗業では未成年者を働かせたとなると大きな問題になる。


どうやって潜り込んだのか聞くと、未成年者専門のスカウト業者が居るらしい。

中学時代から付き合いのあるスカウトだと言っていた。

中学生だとアルバイトもできないので、そうしたスカウトのニーズは高いそうだ。

アルバイトができる高校生になっても夜職の高額な報酬は魅力だ。

リスク対応や、顧客獲得営業を省力化したい場合は個人でなく法人の傘下に入るためにスカウトを使うそうだ。

スカウトは様々な店舗を紹介できるらしい。

キャバクラ、メンズエステ、デリヘル、ソープ等々。


スカウト経由であっても店側は年齢確認をするはずだが、どのようにすり抜けているのかはわからなかった。

店側からすればリスクなだけだと思うが、未成年であることの特別感や、精神的に幼いことで制御しやすいなどのメリットがあるのかもしれない。


オジはそんな優良店なら行ってみたい。

店を通してムスメと会うのも特別感があって面白そうだ。

しかしムスメは乗り気にならなかった。

既にかなり人気になっているらしく予約数もランキング順位にも困っていないそうだ。

店に払うなら直接自分に使えと言ってきた。

直接顧客の金が店に流れるのを良しとしないのかもしれない。


その後はデリヘルの客の愚痴を延々と聞かされた。

握りて締めたが寿司の味が落ちた気がした。


後日、オジはムスメから得られたヒントを元に店を探し出した。

いきなり予約して会いに行くのも面白いがムスメの印象が悪くなるかもしれない。

オジはムスメにたまたま見つけた、といって店の名前を伝えた。

しかしムスメは既に店は辞めていた。

サイトには客寄せとして残しているらしい。

退店理由はクソ客を断れないから、とのことだった。

店でも優良顧客は直で繋がって続いているそうだ。

逞しい。

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