第4話

第4話


女騎士に“師匠”と呼ばれた件について。


 


「名乗れ」


女騎士が鋭い目で俺を睨む。銀の鎧に長剣、そしてこの謎の威圧感。絶対強キャラだ。


「さ、佐藤カイ……ただの旅人です……」


「ふむ。私はレイナ=アーデル。王国近衛騎士団の一員だ」


そんなすごそうな人が、なんでこんな村に?


「実はこの地域に魔物の異常発生があって、調査に来ていた。まさかお前が止めていたとはな」


「いや、止めたっていうか……逃げながら時間停止しただけというか……」


「その“時間停止”、どうやって使った?」


「スキルで、1日10分まで止められるやつです」


レイナの目が光った。


「その技、弟子入りさせてほしい!」


「……は?」


「私もそれ、使いたい!」


「いや、無理でしょ!? 俺しか使えないって女神が言ってたし!」


「細けぇことはいい! 私は“型”を知りたいんだ! 頼む、師匠!!」


 


……なんでこうなった。


 


* * * 


 


「まず“時間停止”ってのはな……こうやって、腹から声出して――」


「腹から? 声?」


「全力で『時間停止ぃぃぃ!!』って叫ぶんだ」


「やってみる!」


「えっ、マジで?」


「じ、時間停止ぃぃぃ!!」


「おお……なんかすごい迫力だ」


「どうだ!? 止まったか!?」


「……全然」


「くっ、師匠、もっと鍛錬をお願いします!」


なんかこう、ノリがすごい。


「そういえばレイナさんって騎士なんですよね? あの魔物、どうやって倒したんですか?」


「斬った」


「そのままだった!」


 


* * * 


 


村人たちが集まり、騎士と異世界人に大歓声を送った。

その日、俺は“旅人の勇者”としてすっかり英雄扱いされた。


――だが。


「カイ様、よろしいですか?」


宿の前に、女神リアノが現れた。


「あなたのスキルが、王国中に知れ渡りました。王都が、あなたを“正式に召喚された勇者”と認定したようです」


「え?」


「ですので――王都に来てください。お迎えの馬車は、明朝に到着します」


 


まさかの、異世界出張のお知らせだった。


(つづく)

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