第2話 死体見つかって調査始まる

4人を殺ったあとは爽快感が立ちのぼる。

魔物らしいスタートを切れたと思う。あとはそれなりの強者との戦いでカタコトの声でも発しておけば相手も警戒してくれることだろう。


「これは楽しみだ。」


アキラはその日は魔物のフリは辞めることにした。とりあえず協会の動向を探るためだ。もし、中層調査の依頼があるのならもう気づかれ始めたんだろうが、無かった場合はどうだろうか。


秘密裏に調査するか、まだ気づかれてないかのどちらかだろう。とりあえず明日は同じ階層で殺り続けるか。


アキラは上層にて自身のランクに相応しい魔物と戦うことにした。ここで、力をセーブしているように見せるのはまずい。上層の魔物に苦戦しているふうを装わねばならない。


目の前に現れたのはゴブリンだ。もちろん武器は安い剣に安い盾。防具も安めの初心者を脱却した人用に切替える。


周りにも人がいる。ソロでやっているとはいえ、全く苦戦しないふうに見せるのは良くないから、色々ときつい。


ゴブリンを複数体倒していて思った事だが、下の階層へと続く階段を降りる一団を見かけない。やはり、まだ気づかれていないようだ。


そしてゴブリンの耳を10体分切り落とす。

これは協会にて納品する事で換金出来るからだ。さすがにゴブリンなだけあって安い。10体倒しても1000円いけばいいほうだ。ケチである。


「ゴブリンってほんと安いよなぁ…。」


「はい〜、ゴブリンは上層の中でも弱い部類ですからねぇ。数も多いですし。」


協会の職員とそんな話をする。


結局900円にしかならなかった。


収支が割に合わない。


アキラは、トホホと思いながら帰宅するのであった。



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ダンジョン内では探索者の死体は消えることはない。現実と同じように腐っていき、骨に変わるだけだ。なので探索していると同業者の死体を見掛けることは稀にある。だが、大半は見つかる前に魔物に食われており原型を留めていないことが多い。


中層を探索していた天堂勇は、前方から腐臭を感じた。


「なんだ?臭いがきついな…。」


天堂が前へと近づくと、地面に何かが見えた。


そっと近づくと、それは死体だ。首を飛ばされている死体が三体、上半身と下半身が分かたれている女性と思しき死体が一体。


匂いに耐えつつも、そっと近づく。

見たところ抵抗した様子が見受けられない。


「なにかいたのか?」


とりあえず死体4人分の探索者証を回収した。死体は回収出来ずとも、探索者証があれば身元が特定できる。


「弔っておくか。」


天堂は、簡単に弔いを行い、その場を立ち去る。


そして、協会へと戻り、事の顛末を伝えに来た。


「受付さん、報告したい事がある。」


「なんでしょうか。」


「新宿ダンジョンの中層で、4人の探索者の死体を見つけた。身元が分からないが探索者証は回収したから調べて欲しい。」


「分かりました…。」


「あと、その4人を軽く調べて分かった事だが、一撃で倒されている可能性がある。」


「その事についても調べておきます。写真などは撮られてますでしょうか。」


「いや、かなり腐臭が漂っててな。鼻を押さえながらだから難しかった。」


「かしこまりました。後ほど結果は聞かれますか?」


「いやいい。それよりもその4人が適正ランクだった場合は少し警戒した方がいいかもしれない。」


受付嬢は何かを察した。


「イレギュラー…でしょうか。」


「だから今後、中層に潜る際には注意を払うように伝えていってくれ。」


「かしこまりました。」


天堂は協会を離れた。あの腐臭のそばに居たからか、体が少し臭うのだ。銭湯へと向かっていった。


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探索者証を受け取った協会が調査部にて調べた結果が判明した。


田辺 義人(Cランク)Lv36

黛 太子(Cランク)Lv37

沢渡 蓮二(Cランク)Lv39

南沢 雪音(Cランク)Lv32


以上4名である。

ギルド名(明星)所属の探索者であり、中層や下層をおもに探索する。


という結果だ。



「4人とも適正ランクですね…。むしろ下層の探索もするくらいですか。」


「ですが、天堂さんの証言では抵抗した様子は見受けられないそうですが。」


「まさか…?階層移動型のイレギュラーとでもいうのか?」


「下層下部か深層あたりの魔物の可能性もあるのでしょうか。」


「かもしれんな。Aランク探索者に何人か調査に出てもらう必要がありそうだ。」


「では、新宿ダンジョン近辺で活動しているAランクの方に依頼を出そうと思います。」


「では早速手続きを始めてくれ。あと、明星ギルドの他のメンバーにも報告をしておけ。あそこにもAランクが2名居るそうだ。」



「了解しました。」


受付嬢と調査部の話し合いは終わり、Aランクの何人かに依頼を出すことにした。



「ということですので、米良さん、依頼を受けることはできますか?」


米良と呼ばれた探索者、それは、明星ギルド所属のAランク探索者である。


「もちろんさ。ギルドメンバーが4人も襲われたんだ。イレギュラーの可能性もあるから準備はしっかりさせてもらうよ。あと何人ほど依頼を取り付けれそうかな?」


「今のところ弓場さんと持前さんと川瀬さんの3人が引き受けてくれそうです。」


「弓場さんが引き受けてくれたのか。それは心強い。明日には調査に出るからよろしく。」


こうして、Aランク探索者4人が中層の調査へと赴くことになったのだった。












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