第14話

 空は、どこまでも灰色だった。

 濁った雲が広がり、影と光の境も曖昧なまま、北門前の広場を見下ろしている。

 ――幌をかけられた遺体の山。

 仮布に包まれた亡骸たちが、軍規格の無紋馬車に積まれて並べられていた。

 幌は静かに揺れ、十数台の車列が軋みながら砦へと進んでいく。

 死体が死体を運ぶような光景だった。

 そんな列の中の一台。

 手綱を引くゾンビに、女がひょいと隣に視線を投げた。

「馴染んでるじゃないですか、騎士殿」

 軽口だった。

 だが隣の“ゾンビ”は何も返さない。フードを深くかぶり、血の気のない頬を隠していた。

 セレスはくすりと笑う。

「今日から、私は雇われの死霊術師。あなたはその従僕。

 到着したら、私は砦の死霊術式を壊し、あなたはリュグナーをとっちめる。

 ――冷静に考えると、なかなか無茶ですよね?」

 レオは顔を上げることなく、ただ短く返す。

「できないことではない。砦の構造は知り尽くしてる」

「死霊術式は?」

「……お前以上の死霊術師を俺は知らん。どうにかできるのだろう?」

「ふふ。そう来ましたか」

 セレスは皮肉っぽく笑いながら、手綱を引き締めた。

 彼女の視線の先では、砦の門がゆっくりと開かれ始めていた。

 湿った風が吹き抜ける。

 死神の砦だ。

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