第4話 大道芸とお嬢さん

着いた街はいつも賑わっている商店街のような場所だった。

早速芸を披露しようと思い、マリオネットを取り出した。

勿論街の警察の方にはやっても良いことを確認し、許可証もいただいた。

自分で故郷の歌を歌い、音に合わせてマリオネットを動かす。

物珍しさで芸を見てくれる人が多くいた。


朝日がのぼり空を見上げ

暖かい日に今日も感謝を

もしもあなたの心にも

届いていたら嬉しい限りだ

見守っていて天の神々よ

私たちの多くの先祖よ

新しい今日という日を

私たちは強く生きていく


この歌は祖父母に教わった歌だ。

田舎の街で代々受け継がれている歌で、今も子を持つ家系は教えている。

マリオネットを上手く動かして、幼い頃にやった踊りを踊らせてみた。

この辺りでは全く聞かない特徴の曲だからか結構たくさんの人がお金を払ってくれた。

「おじいさん、お歌上手ね。」

「ありがとう。お嬢さんはお歌好きかい?」

「うん!大好き。」

「じゃあお嬢さんのためにもう1曲披露しようかな。聞いてくれるかい?」

「うん!」

「じゃあ始めるね。」


ある都市の森の奥暮らしてた

白い髪の子

気味悪いと拒絶され

1人寂しく暮らしてた

ある本に書かれていた伝承

白い髪は呪いの印

神に呪われし子は

村にも悪を呼ぶだろう

伝承1つで狂った

愛を知らない子の物語

泣き声誰も耳向けず

少しだけ哀を知っていく


あまり披露すべきではない曲だが今の手持ちは少ない。

なんせマリオネットを動かさないとなのだから踊りがわかる曲でないといけない。踊りがわかる曲は大量の歌える曲の中で5曲あるかどうかだ。

「物語みたいな曲だったが、どうだったかな?」

「白い髪の子は愛を知れたんだよね…?」

「そうだね。森に訪れた他国の王子様に神に愛された証だと言ってもらえて元気を取り戻したし、王子様に愛を教えてもらったよ。お嬢さんはこのお話は苦手だったかい?」

「ん〜ん、好きだったよ。でもこういう音楽初めて知ったから最初はビックリした。」

「そっか。わしの村ではよくある歌なのだが、珍しいかもしれんな。」

最近まで村の中に本屋がなく、絵本を買う人が少なかった。

子どもたちに絵本じゃなくても物語を楽しんでもらうために考えられたのが、今歌ったような物語口調の音楽だ。

日が落ち始め、少し暗くなってきた。

客足もあまり多くないからそろそろやめどきだと思う。

「そろそろ終わりにするかの。お嬢さんも気をつけて帰りなさいね。」

「は〜い!おじいさん、またね!」

元気なお嬢さんも両親に連れられて帰って行った。

それからほぼ毎日同じ場所、同じ時間に大道芸を披露した。

時々だが子どもたちがきて、「ねぇおじいさん、これ歌って!」と楽しんでいってくれる。

ただそろそろこの街を離れないと、自分の寿命がきてしまう。

「よし。行くか。」

別れの言葉を言ったところで、次に会うことはないだろうから静かに街を後にした。

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