第7話
日が傾き、森を包んでいた光が次第に冷たくなっていく。
カイル、ジーン、ミリアの三人は、朦朧とした意識のまま、森を抜けた。
カイルは全身に打撲と傷を負い、ジーンは肩を痛め、ミリアも魔力の消耗でふらふらだった。
歩くのもままならず、とても学園寮までは帰れそうにない。
「カイル……ごめん。無理言ってもいい?」
「……わかってる。俺の家、すぐそこだ」
誰よりも深手を負っていたカイルだったが、仲間の状態を見て、迷いなく頷いた。
ヴァルメイア郊外、丘のふもとの家。
木造のあたたかな造り、緑の蔦が這う小さな家。
カイルの家だった。
「ただいま……」
扉を開けた瞬間――
「カイル!?ミリア!?ジーン!?ちょっとどうしたの!!?」
駆け寄ってきたのは、カイルの母――リネア・アルグレイヴ。
栗色の髪に優しい笑みが似合う、元回復術士の女性。
だが今、その表情は血の気が引くほど驚愕に染まっていた。
カイルの腕はまだ赤黒く、ミリアは顔を青くし、ジーンの服も泥まみれ。
そして――
カイルの背中には、まだ鋼鉄の“尻尾”が残っていた。
リネアの視線がその尻尾に止まった瞬間、時が止まったかのような静けさが落ちる。
「……それ、まさか……」
だが、今は聞かず、問い詰めることもせず。
ただリネアは、三人を抱きしめるように導いていった。
「とにかく、早く中に入りなさい。湯を沸かして、包帯と薬草を……!」
温かい湯に包まれた三人は、ようやく落ち着いた表情を取り戻す。
リネアの手当ては早く、的確で、傷の痛みも魔力の消耗も少しずつ回復していった。
尻尾は、まだ消えなかった。
だがリネアは驚きも恐怖も超えて、ただ静かにこう言った。
「……あなたの中で、何かが始まってるのね」
その夜。三人はカイルの家に泊まることになった。
暖炉の火がパチパチと鳴る音の中、ミリアが布団に包まりながら言った。
「ねえ……明日から、どうなるんだろ」
ジーンが眠そうな声で応える。
「先生戦の前に、体がもつかどうかだな……」
「……いや、明日からは特別措置。六日間の調整期間が入った。今日は臨時訓練だったからな」
カイルが、布団の中で静かに言った。
そう、明日から六日間――対先生戦に向けた準備期間として、学園は休みに入る。
だが、彼らにとっては“休み”ではなかった。
それは、来たるべき“戦い”に備えるための、運命を左右する猶予期間。
静かな夜が、静かに更けていく。
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