第2話
ヴァルメイアの外れに広がる「リリオの森」は、低ランクモンスターが棲む修練の場として知られている。
だが油断すれば命を落とす者も少なくない、冒険者の卵にとっての“試練の庭”だ。
その朝、カイル・ジーン・ミリアの三人は森へ向けて歩き出していた。
「よし、今日はマジで本気出すぞ。斧に宿る力、ぶっ壊れるまで試す!」
ジーンが肩に担いでいるのは、鉄と魔鉱石を合わせた戦斧グラーナック。攻撃力は申し分ないが、扱い手次第ではただの重りだ。
「私はちゃんと支援魔法を練習するからねー!みんな怪我しても回復できるように!」
ミリアが握るのは、魔力伝導性が高い白樺の杖エルヴァライト。回復と支援魔法の精度は学年でもトップレベルだ。
そして、カイルの背には、布に巻かれた一本の剣があった。
それは、かつて父ロウガが仲間たちと共に鍛えたもう一振りの剣――
名をエクリュ・リベルタス。意訳すれば、“自由への真理”。
10年前、父が消えた直後。
グランヴァルスの背中で震えていたカイルの腰には、知らぬ間にこの剣が括りつけられていた。
鍛冶を司るゴルムの鋼、
錬金のハイドが秘薬で強化し、
魔弓のレイナが魔力を定着させ、
そして剣士ロウガの魂が刃の中心に宿っているとさえ言われている。
「お前が世界一になったら、この剣を振るえ。お前の“答え”を、その刃で刻め」
そんな言葉が、カイルの記憶の奥底に残っていた。
三人が目指しているのは――レイナの
卒業試験の成績次第で、入門が許されるという聖域。
今の三人では、到底届かないと皆が言う。だが、カイルたちは本気だった。
「来週の三対教師戦、どの先生が来るかわからないんだよね……」
「誰でもいい。勝てばいい。それだけだろ?」
「おお、カイルが言うと頼もしい!」
笑い合いながら、森の入り口に到着する。
木々が風に揺れ、薄暗い中に陽の光が差し込むその空間は、どこか懐かしさを覚えさせる静寂があった。
三人は準備運動を終え、それぞれの位置につく。
「じゃ、今日の目標!スキルツリーの新技を一個でも増やす!」
「うん、まずは集中……自分のスキルツリーに入るイメージね!」
スキルツリーに入るには、内面の奥深くへ意識を沈め、“反応”を見つけることが重要だった。
何らかの刺激や感情の揺らぎが起こることで、枝が伸び、新たなスキルが目覚めると言われている。
カイルは再び、あの無限の印を思い出していた。
中心から広がる光の線、無数の枝。
しかし、自分はまだ一つのスキルも持っていない。
あの“無限”の意味――それを考えるたびに、胸がざわつく。
果たしてこれは、“何でもできる”という意味なのか、
それとも、“何にも属さない”という意味なのか。
「来週の試験に勝って、《アーク・ルーナ》に行こう。絶対、そこに答えがある」
カイルの言葉に、ジーンとミリアがうなずく。
「世界一の冒険者……なってやろうぜ、三人で!」
「うん、あたしたちなら、きっとなれる!」
その瞬間、森の奥からかすかに獣の気配が近づいてきた。
それは、試練か、それともただの通過儀礼か――
三人はまだ知らなかった。
この日、スキルツリーが“揺れる”者が出るということを。
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