第15話 血煙の誓い

夜の廃工場。

錆びた鉄骨の隙間から月光が差し込み、腐臭と共にゾンビの群れがうごめいていた。


斬牙は血に濡れた刀を握りしめ、背後に仲間たちを庇うように立っている。

敵はただのゾンビではなかった。

――人間の理性を部分的に残した「狂鬼」。

群れを統率し、異様なスピードで迫ってくる。


「……来るぞ」

低くつぶやく斬牙。

次の瞬間、狂鬼のリーダーが雄叫びを上げ、鉄骨を砕きながら飛びかかってきた。


斬牙の前世の記憶――サムライとしての戦場が一瞬よみがえる。

仲間を守り、己を削ってでも勝利を掴む、それが武士の本懐。


「抜刀――!」

風を切る音とともに、狂鬼の首が宙を舞った。

だが倒れたリーダーの血が地面に触れた瞬間、他のゾンビたちが暴走を始める。

赤い瞳が一斉に輝き、狂気が広がっていく。


「まだ終わってない……!」


仲間の叫びを背に、斬牙は刀を握り直す。

腕は痺れ、息は荒い。

だがその瞳には、かつての武士としての誓いが宿っていた。


――人を護るため、俺は何度でも斬る。


血煙の中、斬牙は再び突き進む。

その一太刀が、新たな戦いの幕を切り開くことを誰も知らなかった。

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