第13話 仮面の影

夜の廃工場。

鉄の匂いと血の臭気が漂い、かすかな呻き声が闇の奥から響いていた。

斬牙は刀を握り直し、静かに気配を探る。


「……いるな。あの仮面の男。」


仲間の一人・涼子が弓を構え、背後の入口を守る。

ゾンビの残骸が散らばる中、低い足音が響き、仮面の男が姿を現した。

その仮面は白く無表情――だが、その背後にぞろぞろとゾンビを従えていた。


「やはり……お前か。人を操っていたのは。」

斬牙の眼光が鋭く光る。


仮面の男は何も言わず、指先を軽く動かす。

次の瞬間、ゾンビたちが一斉に斬牙へと襲いかかった。


斬牙は一歩踏み込み、閃光のごとき斬撃を放つ。

刀が弧を描くたび、ゾンビの首が飛び、血飛沫が暗闇に散る。

しかし倒しても倒しても、奥から新たな群れが現れる。


「無限に湧く……!? こいつ、まさか……」


斬牙は気付いた。

ゾンビの群れは、仮面の男の「気」に呼び寄せられている。

まるでその存在自体が“瘴気の核”であるかのように。


「やはりお前を斬らねば、この災厄は終わらぬ!」


斬牙は叫び、ゾンビの群れをかき分けて仮面の男へ迫る。

だが――仮面の男は静かに刀を抜いた。

その型は、かつて斬牙の前世「侍」であった頃にのみ伝わる流派の構え。


「なっ……!? その構えは……!」


斬牙の脳裏に、前世の記憶がよぎる。

血煙の戦場、師の声。

――まさか、仮面の男もまた、“侍の魂”を持つ者なのか。


闇に火花が散る。

斬牙と仮面の男の刃が、ついに交わった。

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