第2話 月見うどんしか食べることのできない衰退国の話

「こんなもの食えるかあ!」

その禿げた老人は介護士に向けて怒鳴り声をあげた

「これが食べれるだけで幸せと思ってください」若い介護士はその老人をたしなめる

「そばじゃあああ!そばを食わせろ!」老人は叫ぶ

「そば?そばってなんですか」若い介護士は怪訝な顔をする!

「そばを知らんのか!儂が若い頃は立ち食いそばと言うものがあったのじゃ」と老人

「あ~そうですか?そんなものは今の日本にありませんよ」

「ちくしょう!そばが食いたい!ゲソ天が食いたい!なんとかしろ」

「げ、そてんですか?何ですか、それ?」

「イカの足じゃあああ!それ揚げたものじゃああ」

「ああ、イカですか。それって高級すし店でも滅多に手に入らない食材ですよ」

「ちくしょう!ちくしょう!中国め!中国め!」

「どうでもいいから早くたべてください。この月見うどんを!」

「昨日も月見うどんじゃった。その前の日も!」

「そうですよ。この国では月見しか食べれないってもう30年前からそうなってますよ」

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新日本昔ばなし 干しそばくんと言われた男 @uhyo_ojisan

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