第42話「暴走する欲望、新たな『美』の獲物」
警察署から釈放された藤堂悠は、一切反省の色を見せず、自宅のアトリエで夏希のヌード画15枚と等身大彫刻を創り上げていた。彼の心は、夏希の「美」への狂気的な執着に囚われたままだ。しかし、夏希の「美」を独占したいという欲望は、もはや既存の創作活動だけでは満たされなくなっていた。
(夏希くんの『美』は、無限だ。だが、僕の筆は、まだその全てを捉えきれていない……。もっと、もっと、新たな『美』の形を、僕のコレクションに加えたい……)
藤堂の欲望は、静かに、しかし確実に暴走し始めていた。彼の視線は、夏希の「美」を追求する中で、新たな「美」の獲物を探し始めていたのだ。
そんなある日、藤堂の元に、知人から家庭教師の依頼が舞い込んだ。中学二年生の男子生徒で、成績不振に悩んでいるという。その生徒のプロフィール写真を見た瞬間、藤堂の瞳の奥に、新たな執着の炎が燃え上がった。
写真に写っていたのは、夏希とは異なるタイプの、しかし紛れもない「男の娘」だった。可愛らしい顔立ちに、どこか儚げな雰囲気。藤堂の「大学生の男の娘がタイプ」という噂は、彼が「男の娘」という存在に特別な「美」を見出していることの証だった。そして、中学生という年齢は、藤堂の歪んだ欲望をさらに刺激した。
(これは……新たな『美』の顕現だ。夏希くんとは違う、未成熟な、しかし純粋な『美』……。これを僕のコレクションに加えれば、夏希くんの『美』も、より一層際立つだろう)
藤堂は、家庭教師の依頼を二つ返事で引き受けた。彼の目的は、生徒の学力向上ではない。その生徒を、自身の「美」を追求するための、新たな画材のモデルとすることだった。
家庭教師の初日。藤堂は、生徒の自宅を訪れた。生徒は、少し緊張した面持ちで藤堂を迎えた。藤堂は、完璧な笑顔で生徒に接し、信頼関係を築こうと努めた。しかし、彼の頭の中は、すでに生徒の身体を「美」として切り取る構図でいっぱいだった。
授業中、藤堂は生徒にさりげなくポーズを取らせたり、特定の角度から光が当たるように誘導したりした。生徒は、藤堂の指示に素直に従う。そして、授業の合間、生徒が休憩している隙に、藤堂はスケッチブックを取り出し、生徒のフルヌード画を秘密裏に描き始めた。生徒は、自分が教師の歪んだ欲望の対象となり、その裸体が「記録」されていることなど、知る由もなかった。
(ああ、素晴らしい……。この無垢な身体……。夏希くんの『美』とは異なる、新たな『美』の形だ。誰にもバレていないと信じている、僕だけの秘密の創作活動……)
藤堂は、生徒のフルヌード画を1枚、また1枚と描き上げていく。彼の欲望は、もはや止まることを知らなかった。夏希の「美」への執着は、新たな「美」の獲物を見つけることで、さらに暴走し、深淵な領域へと足を踏み入れていたのだ。
一方、男子校では、夏希が生徒会長としての職務に邁進していた。藤堂の逮捕によって、一時的な安堵が広がっていたが、夏希の心には、まだ微細な「解析不能な感情の揺らぎ」が残っていた。彼は、藤堂の執着が完全に終わったわけではないことを、無意識のうちに感じ取っていた。
雀堂天音は、夏希の幸福度データに、その微細な揺らぎを記録し続けていた。御園絢人も、藤堂の存在が完全に消え去ったわけではないことを警戒していた。生徒会副会長・東雲は、学園の秩序を乱す可能性のある新たな波乱を冷静に観察していた。
藤堂の暴走する欲望は、夏希の知らない場所で、新たな犠牲者を生み出し、この男子校の「モテ地獄」に、まだ見えない形で、さらなる波乱をもたらすことを予感させていた。
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