第4話 九九とイベント運営

夏希は、男子校で唯一“TS”した元女子という存在。

見た目は完全に女子。でも中身は男子。

そんな彼が、文化祭のイベント運営委員に選ばれたのは──飛雄のせいだった。


「俺が委員やる! ペアは夏希な! 九九できないけど、ノリと勢いでなんとかなるっしょ!」


教室が凍った。

飛雄は、破天荒でバカで、でもなぜか憎めない。

九九は「ににんが……えっと、バナナ?」とか言い出すレベル。

でも、なぜか男子校の人気者。


> 「え、夏希ってあの“TS”の……?」

> 「飛雄、また勝手にペア決めてるし」

> 「でも夏希、最近ちょっと……かわいくなってね?」


---


夏希は、飛雄の隣に立つことになった。

イベント運営の打ち合わせ中、飛雄は企画書を逆さに読んでいた。


「なっちゃん、これって“逆さま”で読むと暗号になるんじゃね?」


「それ、ただの印刷ミスだよ……」


「マジか! でも俺、そういうの好き! 運命感じる!」


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夏希は、飛雄の“バカさ”に振り回されながらも、

なぜか心が揺れていた。


「……飛雄って、なんで俺を選んだの?」


「だって、なっちゃんだけは俺のバカにツッコんでくれるじゃん。

他のやつは笑うだけで、俺のこと見てない。

でも、なっちゃんは“俺を見てる”。

それって、ちょっと……好きってことじゃね?」


---


夏希は言葉を失った。

飛雄の言葉は、バカだけど、真っ直ぐだった。


「俺、九九できないけど、なっちゃんのことはちゃんと覚えてる。

“なつき”って名前、俺の中で一番大事な“九九”だよ」


「……それ、九九じゃないし」


「でも、俺にとっては“に×つ=き”なんだよ。

意味わかんないけど、好きってこと!」


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