第4話
希美と再会した次の日。
街の人々は神社に集められていた。
「あぁ……祠がこんな事になってしまって……」
「これでは神様も怒ってしまうわ……」
神主がそっと祠を直していく。
「ねぇ、祠なんてあったっけ??」
希美が小声で俺に言う。
「昔からあるだろ。俺はばあちゃんから聞いてた」
「へぇ、私は何も知らなかったよ」
直しおわって、神主が祈りを捧げる。
街の人々は手を合わせて目を瞑る。
「やぁやぁ、人間様はお利口さんやねぇ」
後ろから聞いた事のある声。
「こぐ……」
「よ、少年。……まぁ祠が直っても関係ないんやけどな」
「は??」
思わず声が出た。
「秀??」
「ごめん……」
何もなかった様に手を合わせる。
「祠が壊された事で、僕の力は小さくなってしもうた。……いくら直してもこれは元には戻らんよ」
「じゃあ……」
「災厄はまだまだ続くで。なぁ、秀君。手ぇ貸してや」
「俺より適任はいるだろ。例えば神主さんとか」
「残念ながら神主には僕が見えんねん。今の所僕が見えるのは君だけやで」
そう言って希美の肩を抱く。
「ほらな??気づいてないやろ??」
確かに、何事もない様に希美は手を合わせている。
「せやからな、秀君。この街は君にかかっとるねん」
「んな事言われても……」
「そりゃあ希美ちゃんは今でこそこの街におるかもしれん。でもこの災厄を放っとけば日本中に関わってくるかもなぁ」
「は??そんなやばいのかよ??」
「やばいで??……これは、日本、いや世界の終焉の始まりやねん」
ぎゅっと眉をひそめる。
「やから、な??僕と守ろうや。この街を、日本を、世界を」
「秀、なんか変だよ」
「何がだよ」
「なんかぼーっとしてる。……私以外と喋ってるみたい」
「せいかーい」
近所の駄菓子屋でアイスを食べる。
……何故こぐがここにいるかは分からない。
「美味しそうなもの食べとるんなぁ」
「お前ご飯とか食うの??」
「食べへんよ??やって神様やし」
「秀??」
「あ、ごめん。なんか言った??」
「ほらー!!もう!!やっぱ隠し事……!!」
「してないって」
「しとるよなぁ??」
「黙れ」
その言葉に肩をすくめるこぐ。
「あ、そうだ!私ね、こっちに帰って来たら行きたかった所があるんだ!」
「どこだよ??」
「向日葵畑!!この街の1番綺麗な所!!」
ニコニコと、向日葵なんかより明るい笑顔を浮かべる希美。
「ね、明日行かない??」
「まぁ、いいけど……」
「やったぁ!じゃあ明日家に迎えに行くね!」
嬉しげにアイスを食べ終わる彼女。
「…………」
こぐは黙り込んでいる。
「こぐ??」
「弓、持って行きなや」
「は??」
その言葉を残して彼は消えてしまった。
「…………??」
「あ、秀!!アイス垂れちゃう!!」
「うぉっ!?」
慌ててアイスを口にする。
「(どう言う事だ……??)」
「アイス、美味しそうやったなぁ」
狐喰守地珠訝夜はぼんやりと呟く。
「……まぁしっかり青春楽しんでくれや、少年」
いつもより目を開いて、ニヤリと笑う。
「これは街の為で、僕の為なんやから」
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