第2話
「……誰だよ、お前」
「最近の子は口悪いなぁ」
ふわり、と鳥居から降りてくる。
どう見たって人間じゃない。
「でも君、僕が見えるんやな」
「見えるって……??」
「大抵の人間には見えへんよ。だって僕、神様やし」
神様??そんな存在がいるのか??……いるとしたら、何故俺には見える??
「僕は狐喰守地珠訝夜(こぐらいしゅちたまがや)。この街の守り神やで。気軽に『こぐ』って呼んでや〜」
「神様がそんな簡単でいいのかよ……」
「ええのええの!!普段は寝とるだけやし」
ケラケラと笑うのに、目だけはずっと笑っていない。
「……ま、生真面目な秀君には難しい話かな??」
「……俺の名前まで分かるのかよ」
「だって神様やで??」
自慢げに胸を張られてしまえば、威厳も何もない。
「さてさて、ここからが本番や」
彼の人差し指が俺を指す。
「なぁ、僕に力貸してくれへん??」
「は??」
「今の僕にはこの街を守る力がないねん。……色々あってな。せやから秀君、君のその弓矢の力を貸してや」
その言葉に息がつまる。
「俺は……もう弓を構えることなんて……」
「やりたい癖に、人間は面倒やなぁ」
ふぅ、とこぐがため息を吐く。
それと同時に耳を劈く様な音がした。
「これは……!?」
「秀君。君には守りたい人がおるやろ??……5分だけ僕が食い止めるから早う弓矢持って来てや」
彼が何かを唱えると、真っ赤な光がその場を包む。
「ほら、この街は君の選択次第や」
ひたすらに、只々走った。
「何なんだよ、くそっ……!!」
部屋から弓を掴み出す。
「秀??」
寝室から母親が出てくる。
「どこに行くの??弓なんて持って」
「……ごめん、言えない」
そう言って家を出る。
ごめん、母さん。
多分貴女を守る術がこれだから。
「お、ギリギリやなぁ」
「こぐ……」
汗を垂らしながら結界の様なものを貼る彼。
「あいつ、見える??」
植物に塗れた様な姿の、怪物。
「放っとったらこの街の植物全滅やで」
「……どうせやるしかないんだろ」
「へぇ、意外と従順やん」
「今回だけだからな」
袋から弓を出す。
「ほな、合図で放ってな」
彼の目は更に赤く光る。
『空に増します神々よ。この一矢に全てを。全ては救いの為。そしてこの物の安寧の為に。その為なら全てを差し出そう』
こんのアイコンタクトで矢を放つ。
命中。
謎の生き物は不気味な声をあげて消え果てた。
それと同時に、周りの植物が元に戻っていく。
「あはは!凄い凄い!!秀君、君には才能があ……あら??」
矢を放ってから、頭がぐるぐると痛む。そして俺は倒れた。
「……みーつけた」
そんな言葉なんて聞こえないまま。
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