射たその先には
@mono_99
第1話
夏なんて、あっさり終わる。
馬鹿程に肌を照らす太陽光。蝉の鳴き声。
監督の放った言葉。
『今年、俺たちは大会を辞退する事となった。』
弓道部部長、弦乃秀。それが俺の名前だ。
部長として皆を必死に支え、一丸となって全国優勝を目指して来た。
そのはずだった。
『一丸』、だなんて俺のエゴだったのだろうか。
一部の部員の問題行動。それが表に出て、俺達の夏は何も出来ず終わった。
「まぁこればっかりは部長のせいじゃないっすよ」
「俺達だって悔しいです……」
部員達と駄菓子屋でアイスを買って食べながら帰宅する。
「しゃーねー!こうなったら一夏の恋に花火散らそうじゃないっすか!!」
「散っていいんですか??」
「それは良くねぇな」
「いや今自分で言いましたよね??」
後輩達が元気づけてくれる。
「……ありがとな、2人とも」
「??何もお礼言われる事してないですよ??」
「そうそう!!俺馬鹿だからそんな事しか言えないんすよ!」
「でしょうね」
「おい!!」
思わず笑みが溢れる。
兎に角、今だけは、笑っていたかった。
「……眠れないな」
時刻は丁度0時を回った。
只々、『悔しい』感情が頭をぐるぐるする。
「明日から何するかな……」
無理矢理眠ろうと目を瞑った。
その瞬間ギラリ、と眩い緑の光が見えた。
「!?!?」
そう、見えたのだ。目を瞑ったはずなのに。
「何だ、今の……??」
カーテンを開けて外を見る。真っ暗な闇が街を包んでいる。
「神社の方だよな」
方角が分かったのも何故かは不明だ。
気になってしまった俺は急いで神社に走った。
「何だよこれ……」
鳥居を潜れば異様な光景が目に入った。
植物がドロドロと溶けて、野良犬の死骸が散乱している。
「夢……??いや、違う。これはちゃんと現実だ……」
ふと前を向けば、小さな石達が転がっている。
『この祠はね、この街を護るためにあるんだよ』
いつか聞いた祖母の話。
あの石達はきっと壊れた祠だ。
「どうして……」
「どうしてやろなぁ??」
突然響く、自分以外の声。
驚いて周りを見渡す。
「ここやここ。……自分、眼鏡の度合ってないんとちゃう??」
鳥居を見上げた。
茶色い長髪が風に靡く。
「やっほー、少年」
死装束。獣の様な耳と尻尾。前髪で隠れて片目しか見えないが、その目は赤く、瞳孔は開いたまま。
とても人間とは思えない青年が、鳥居の上に腰掛けていた。
「……これもきっとご縁やなぁ」
鋭い歯を見せながら、彼は妖しく笑った。
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