14話 感情は毒になる

夕暮れが校庭を染める頃、ユリは一人、校舎の屋上にいた。

空は茜色に燃え、風が静かに彼女の黒髪を揺らす。


心の奥で、何かがざわめいていた。

それは、エンド・フラワーの囁き。無数の魂の叫びが、重なり合い、響いている。


「なぜ…私を選んだの?」

ユリは独り言のように呟く。


その時、背後から声がした。


「ユリ、いつまでも一人で抱え込むな」

振り返ると、シャクヤクが立っていた。

鋭い視線の中に、どこか寂しさが滲む。


「私は人間を信じない。

だけど、君だけは…違うのかもしれない」


シャクヤクの言葉に、ユリは少しだけ微笑んだ。


「私も、まだ何もわからないけど…

みんなの痛みも、私の力も、

否定せずに受け止めてみたい」


その時、遠くでスイレンの未来視が囁いた。


「…災いが迫る。時間がない」


ユリは覚悟を決める。

自分の中の闇も、光も、全てを使いこなすために。


「始めよう。私の巫女としての道を」


屋上の風が強く吹き、茜色の空に新たな夜が訪れた。

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