15話 ローズの微笑はナイフ

翌日、ユリはいつもより早く学校に向かった。

彼女の胸の奥には、昨夜の決意が静かに燃えている。


校門をくぐると、スイレンが待っていた。

「ユリ、今日こそ話があるわ」

スイレンの瞳には、いつもの焦りとは違う、冷静さが宿っていた。


二人は人気のない廊下で向き合う。

「未来は変えられない。だけど、知ることはできる」

スイレンは短く告げた。


「あなたの力は、教団の中でも異質だ。

だからこそ狙われる。気をつけて」


ユリはその言葉に重みを感じた。

教団の争いが彼女に向かっているのだと。


「でも、どうして…教団はそんなに悪魔を復活させたいの?」

ユリは尋ねる。


スイレンは一瞬、遠くを見るように目を伏せた。

「私たちは、過去の痛みの集合体よ。

復活は破滅ではなく、終わりと始まり。

けれど、私はそれを止めたい」


ユリは静かに頷いた。

「なら、私も力を覚醒させなきゃ」


二人の間に、不思議な連帯感が生まれた。


だが、その背後では、ローズやロベリア、マリーたちが密かに動いている。

それぞれの想いを抱えながら、激しい内紛の火種がくすぶっていた。


「エンド・フラワーの依代となったユリは、どちらの味方に付くのか――?」


それは、教団全体の未来を決める戦いの始まりでもあった。

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