そして、私は完結する

小谷杏子

プロローグ 遺書

 私の劣化はいつなのだろう。それが私の人生における最大の難問であり、敵だった。


 この考えは私の意思によるものだろうか。それとも誰かの影響なんだろうか。

 私たちはなんのために頑張ってるんだろう。誰のために頑張ってるんだろう。

 私はすべての情報を遮断して考えた。いや、この思考さえも誰かのものなのか。


 私は私というオリジナルだと思っていた。でも十五年生きて、あらゆる知識を身につけた結果、いろんなものを与えられてきたそれはオリジナルではない。

 劣化が始まっているのではないだろうか。それだけは嫌だ。

 私は自分の劣化を恐れている。


 生きながら劣化することは恐ろしい。見るに堪えない。

 ただ、ここで世界を閉じるのは本意ではない。

 劣化を恐れるあまり死を選んだという物語だと、ただのお粗末な悲劇にしかなり得ないから。


 これから私は私という体を脱ぎ捨てるけれど、これは別れではない。物語の導入に過ぎない。

 あなたたちの思考力で劣化を回避できるかはわからないけれど、この実験が成功することを祈って、一足先に私はエピローグへ向かう。


 私が書いたシナリオ通りの未来を夢に見て、世界を閉じていく。

 そして、私は完結する。

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