二
四月一日の朝、貴方の枕元に紫陽花のドライフラワーを飾る。寝ている貴方にそっと口づけをして仕事に行く。
昨夜降った雨の匂いが扉を開けると香ってきて、昔を思い出す。
君と会った日に咲いていた紫陽花とその上に輝く水滴、僕はその光景をとてもよく覚えている。君は紫陽花についた水滴に顔を近づけてよく見ていた。あまりにも美しくて僕は思わず声をかけた。その時に何を言ったかなんかは今となればとても恥ずかしくて言えないが、君は今でもそれを覚えているようで、たまに思い出しては僕の顔を赤くしてくる。
素晴らしい朝である。濡れたコンクリの上を歩く、街もどこかひっそりと息を潜めていて、今向かっている場所が仕事でなければ最高であったが、素晴らしい朝と言えるだろう。職場まであと半分ぐらいのところにコンビニがあり、僕は毎朝ここでコーヒーを買う。カップのコーヒーではなくて普通のどこにでも売ってるボトル缶のアイスコーヒーをわざわざここで買い職場に飲みながら向かう。なんとなく続けているルーティンだが、いつしか僕にとって大事なものになっている気がしている。
今日が終われば休みで、夜から君と過ごせることを思うと足が軽くなる。明日はどうか晴れでありますように。
嘘尽き one man writer @tondani_pee
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