嘘尽き

one man writer

 雨雫一つ百日紅の花を揺らす。君は微笑み、僕を見る。「雨降って来たね。」と君に言われ僕は返す「やむまでここで待とうか。」君は静かに微笑み百日紅を見る。雨雫が一つ、二つ、三つと増えていく、気づけば数えきれないほどの雨雫が百日紅に降りかかる。ふわっとした土の濡れる香りと目の前で濡れる百日紅を見る君の横顔に僕は見惚れている。いつかきっとやむであろうこの雨に僕たちの心は突き動かされている。家に干してきた洗濯物の事など忘れ只この雨に感動している。

 君は話す「百日紅って、すごい良い名前じゃない?夏の長い間花が咲き続けるこの花に百日の紅って名前をつける。私はすごい好きだな。」「うん。僕も好き。」僕が返す。雨の音が二人を包む。池に落ちる雨雫、木々の葉に落ちる雨雫、僕たちがいる東屋の屋根に落ちる雨雫、雨の音と言っても一つではない、一つとして同じ音がない雨の音に僕たちは包まれている。


この雨はやまないね。

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