第2話 怖い と 外側

***番乗り場に快速列車が通過します、

ご注意ください。

ゴッッ

私の長い前髪を揺らしながら快速列車が通過していく。

苦手なんだよね、目の前を超加速で通過する電車…

足がすくむんだよな。


数時間前、"サトリ"が連れてきた依頼人の駅員より電車への飛び込み遺体が消えると相談を受けた。

詳しく話を聞くと、事故の前に必ずホームの方で不可解な事が起こるらしく。

例えば半狂乱の人が電車を待っている人を線路へ突き落としたり、突然に大笑いしながら身を投げたりするらしい。

それよりも更に不可解なのが、有るはずの遺体が何処を探しても見つからないと言う。

お陰様で自分は報告書などの後処理で家に帰れないと嘆いていた。

場所は特定の場所でしか起こらない、その場所は

"若ノ松駅"だと言う


そして今、私と"もみじ"は例の若ノ松駅と言う3つの路線が交差する、立体交差型の駅に来ている。

この街で一番大きな駅だ。

別に今の所は異常はなく多くの人が行き交っている。

特に曰く付きの場所だとかの噂は聞かないし、本当に普通の駅だ。

周囲を観察していると"もみじ"が質問を投げてきた

「"ここ"ちゃん何も起こらないね、暇だね〜

化け猫の鈴はどんな感じ??」

「ああ、有るよここに」

私はポケットから金色の鈴を取り出して

もみじに見せた。

「まだ何の変化はないね。てかその鈴めっちゃ便利だよね!妖怪とか幽霊とか"

変な物"が近づくと音がなるの、マジ助かる」

「そうだね、今までは見えないなりにいろいろ工夫して調査してたからね、まさか本当にファブ◯ーズが除霊に効果的だったのは驚いたよ。」

私は鈴を手のひらで転がす、だか音は鳴らない

不思議だ。

「そんな便利な物が手に入るなんてさ、猫屋敷の件で命をかけた甲斐があったよ!」

"もみじ"はあの時を思い出しているのか駅のホームとホームの間から見える青空を見上げた。


プルルルルルルルルルルッ 駅のアナウンスだ

『まもなく、***番乗り場に列車が到着します。

黄色い線のそとガッガッギギッガ』

ん?なんか音が変だ

「"もみじ"なんか、スピーカの音が変だよな?」

当たり障り無い会話を相方にしようと語りかけた

その時


チリン チリン


化け猫の鈴が鳴った


"もみじ"に報告しようとするより先に

彼女が私の肩を叩いた。

それに反応して私は"もみじ"の顔をみた。

長いまつげの奥にある赤茶色の瞳は

ある一点を見つめていた

「"ここ"ちゃん、あの人、変だよ」

"もみじ"が見つめる先に振り返り、見る

目線の先には制服姿の女子学生がいた、具合が悪いのかその場にうずくまっている。

私は疑問だった。

ただ具合が悪そうな人を"変"とはなんだ?

滅多に風邪をひかない奴には珍しいのか?そこまで阿呆なのかこの子は…

しかし、こんな時の"もみじ"は妙に勘が鋭い

いつもは『ぽけ〜』っとしているのに 、

血筋が関係してるのか?

それより今は女子学生が心配だし様子を見に行こう。

私が駆け出すと腕を掴まれた。

「待って!"ここ"ちゃん嫌な感じがする」

"もみじ"が私を引き止めていた

「"もみじ"離してよ、幾ら自分が体調を崩さないからって他人の体調不良を不思議だと思わないでくれよ!それに、困ってる人を助けるのが探偵の基礎だろ?」

私は手を振り払い再び女子学生に駆けだした。

「馬鹿!"うち"はそこまで阿呆じゃないよ!本当に馬鹿!!!!」

"もみじ"は叫びながら私の後を追う。

私は女子学生の元にたどり着き様子を伺うため

横にしゃがみ込んだ。

女子学生は身体が小刻みに震えている、

そして、何かボソボソと言葉を発しているが聞き取れない。これは結構具合が悪そうだ。

「大丈夫かい?具合が悪いなら安静にできる所に行こう。」

声をかけても反応が無い。

聞こえて無いのか?意識の混濁?!!熱中症か?

それなら急を要する

「お嬢ちゃん、何か飲み物は持ってる?」

喋りかけながら私は顔を覗き込んだ。

「ヒッッ」

私は顔をみて小さな悲鳴を発してしまった。

女性の顔を見て悲鳴を発する事はとても失礼な事ではあるのだがそれを考慮しても仕方がない程に

恐ろしい顔をしていた。

目が飛び出してしまうのではないかと言うほど

カッ開いた目。その目の下を左手で何度も掻きむしったのか、引き裂かれたような深い傷

もう片方の右手は口角が吊り上がった口内に見える白い歯で血が出るほど爪を噛み砕いてる。

正気とは思えない…

そして、

顔を近づけたせいでボソボソと発していた言葉も

鮮明に脳内に刻まれていく。

「「そとがわ ソトガワ そとがわそとがわ?そとがわそとがわそとがわ そとがわ そとガわそとがわそとがわそとがわ!そとがわソトガワそとがわそとがヮソドガワそとがわそとがわ?そとがわそとがわそとがわそとがわソトがわ ソトガワ そとがわ!?そとがわそとがわそとがわそとがわソトガワそとわがそとがわそとがわ ソトガワそとがわソトガワそとわがソとガ縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→縺後o縺昴→ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッ繧ス繝医ぎ繝ッソトガワそとがわ?!ソトガワソトガワ」」


私は血の気が引いた、これは駄目な奴だと

何故"もみじ"の忠告を聞かなかったのだろう、

いつもなら"そんな選択"はしないはずなのに。

取り合えず離れよう。

そう考えて距離をとる直前に"ソレ"と目があった

あっ ヤバい

刹那、自分の首に衝撃が加わる。

「ヴッ」

理解する前に私の身体は宙に浮いた。

息ができない!

首元に目線を向ける、手だ。私は首を絞め上げられている!

誰に?!ヤバい、意識が飛ぶ

首を絞めている白魚のように美しく華奢な腕をたどり顔を見る、やはり先程までうずくまり震えていた、女子学生だった。

恐ろしい顔は更に般若のように変わり目は焦点を失っている。ボソボソと発する程度だった言葉は周りの人たちにも届く程の声量で吠える。

「「嫌だ!嫌!嫌だ!嫌だ嫌!!嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

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何が「嫌だ!怖い」だと?!!

それを言いたいのは私だ!首元を絞め続ける手を剥ぎ取ろうとするがびくとも動か な ぁ ぃ ぃ

「そこのアンタ!!!何してるのッッ!」

ドスッ

宙ぶらりんの身体が凄い衝撃と共に揺れる

絞めている手が少し緩んだ

何事かと薄れかけていた意識を呼び戻し衝撃が加わった方角を目線で追う。

「嘘でしょ!"うち"の蹴りを片手で止めれるの?」

"もみじ"が私を助けるために回し蹴りを一発入れたようだがあっさりと片手で受け止められていた。

手が緩んだわけではなく両手から片手になっただけのようだ。格闘術の蹴りを片手で防ぐとか

なんという剛力。


『プルルルルッ ***番乗り場にまもなく列車が

到着します。危険ですので黄色い線の内側にお下がりください』

2回目のアナウンス?何故だ少し前も流れたはず。

遠くの方から電車の『パアァァァァァ』と言う音が鳴り響く。

その音に反応した女子学生が線路の方に顔を向けた。

「「いきたくない」」

そう呟いた女子学生は私達を掴んだまま

凄い勢いで線路に走りだした。

足を掴まれたままの"もみじ"はバランスを崩し

両足が完全に地面から離れ

代わりに頭を地面にぶつける。

「ヴッ」

私の身体は走る振動によって揺れ続け掴まれている

首に爪が食い込んでくる。

抵抗しなければ終わる!!思考をめぐらせろ!!

薄れる意識で必死に頭の中をフル回転させる。

ふと耳元に声が聞こえた、


『終わっちゃえば?』


思考が止まる、何も考えれない

「「おわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるオワルオワルオワルオワルオワルおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるおわるオワルオワル終わっるオワルオワルオワルおわるおわるおわ」」


遠くで誰かの悲鳴が聞こえる

目の先に駅のホームが見える

意識の無い"もみじ"の気配がする


電車のライトが私の瞳の中で乱反射して視界と意識を奪う


あっ 終わった


ドンッ

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馬鹿と阿呆それから怪奇探偵社 @のびなやみ @nobinayami-

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