ある少女の独白 A
「きれい」という言葉があるそうです。
言葉の意味は、美しい。お片付けされている。きたないの逆。
そういう意味だそうです。
質問したら、きたむら先生が教えてくれました。
なんとなくはわかります。
私だってお掃除の時間には雑巾で机を拭きますし、遊んだおもちゃはちゃんとおもちゃ箱に入れて片付けます。
でも、それがみんなの言う「きれい」なのかは、よくわかりません。
だって、わたしは目が見えないからです。
* * * *
小さい時から、私は目が見えなかったそうです。
生まれた時からそうだったのかは、わかりません。
わたしにはお父さんもお母さんもいなかったので、施設にいる前のことはよく覚えていないのです。
目が見えないわたしに、施設の先生や仲間たちはとっても優しくしてくれました。
仲間たちが「かわいそうだね」「がんばってるね」と私に言う度に、先生たちは「そんな風に言っちゃいけません」と、叱ろうとしているのかそうじゃないのか、半分こくらいのお小言を言いました。
わたしは目が見えなくたって、自分を「かわいそう」とは思いませんでした。
だって、私は箒や雑巾やバケツがロッカーの何処にしまってあるか、見えなくてもしっかり覚えることが出来ました。
きーちゃんは使った箒を同じ場所にしまわないので、いつも私が同じ場所に戻してあげるのです。
みいくん先生も、「りっちゃんはすごいね」と褒めてくれます。
でも、みんながお絵描きしてる時間に、やることがないのはつまらなかったです。
そんなとき、わたしはトイレでお絵かきの時間が終わるのをよく待っていました。
トイレの入り口から3つめのお部屋には、お婆さんがいたからです。
先生が忙しいときは、代わりにお婆さんとお話するのです。
お婆さんは、よくわからない人です。
お婆さんは、ほかの子とお喋りできません。
そもそも先生も仲間たちも、「そんな人いないよ」というのです。
でも、わたしにはお婆さんが見えました。
お婆さんはいたりいなかったりするのですが、いるときはわかります。
わたしの『まっくらなせかい』に、『ぼんやりひかって』いるからです。
『まっくら』も『ひかり』も、みいくん先生にお婆さんの話をしたときに教えてもらいました。
でもみいくん先生は、お婆さんはいないと言います。
よくわかりません。
わたしがお婆さんとお話していると、きーちゃんはいつも「へんなの」と、不思議そうにします。
わたしは、へんなんでしょうか。
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