1分で読める、ホラー小説「おばあちゃん家の井戸」

@yakiniku1111111

おばあちゃん家の井戸

田舎にあるおばあちゃんの家には、古びた井戸がある

苔むした石組みは湿気で黒ずみ、ひんやりとした空気が漂う。

その井戸から、おばあちゃんは毎日水を汲み上げる

洗濯物を洗い、鍋で煮込み、湯呑みに注いで平然と飲み干す。その水は、どこか生臭いような、鉄の味がするような気がしたけど、井戸の水だからそんなものか・・・気にしたことはなかった


ある日、好奇心に駆られて井戸の縁に身を乗り出し、底を覗き込んだ。暗闇の中、かすかに揺れる水面に、何か白いものが浮かんでいる

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飴玉のような、つるりとした二つの白い点

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目を凝らすと、それが動いた

ゆっくりと、こちらをじっと見上げるように・・・

それは飴玉なんかではなかった。

深い井戸の底から、ぎらつく「二つの目」

二つの目線が私を捉え、長い髪が水面に漂い、絡みつくように揺れる


全裸の女が、井戸の底からこちらを見上げている、彼女の肌は不自然に青白く、水に浸かりふやけたように膨れている

唇は動かず、ただその目は、粘りつくような、吸い込まれるような視線で私を捕らえて離さない

まるで、私の全てを見透かし、引きずり込もうとしているかのようである。


私は言い知れぬ恐怖に背中を押されるようにその場を離れ

おばあちゃんに井戸の底に女の人がいることを泣きながら伝えた


それでも、おばあちゃんは変わらずその井戸の水を使う


洗濯物を浸すたびに、水面からかすかな泡が立ち、布に奇妙な匂いが染みつく。料理の鍋からは、時折、髪の毛のような黒い影がチラつく

おばあちゃんはそれを知っているかのように、黙々と味噌汁をすする

湯呑みを手に持つその指は、どこか異様に長く、節くれ立っているように見える

井戸の底に潜む女の目は恐ろしい

でも、もっと恐ろしいのは、その水を平然と使い続けるおばあちゃんだ。


夜、台所で一人、彼女が井戸水を口に含むとき、唇の端がかすかに歪む。まるで、井戸の底の女と何かを共有しているかのように。


終り

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