ふと、日常の中で気になる風景がある。
雨樋の側で、豆柘植の植え込みの陰から
髪の短い少女の顔が覗いている。
頭一つ、飛び出しているから、直ぐに気が
付くのだが、それも何事もなかった様に
引っ込んでしまう。
あり得ない場所で。
何度か、そんな事があった。
怪異なのかは分からない、その何気ない
気付きは、友人宅での と或る出来事 で
突如として不可解さを増してゆく。
その淡々とした筆致が、余計に不可解と
怪異を結びつけてしまう。そして
静かに戦慄する。
とても巧い書き手だ。
怪談とは、まさに日常とは地続きの
ふとした気付きの中に紛れ込む。
建物の隙間に、何か を見る事はきっと
それ程、珍しくはないのかも知れない。