第18話
午後2時に装備を整えてみんな集まって来た。
サラとアカネとイクミはギルドの休憩室で過ごして居て、イクミのお守りが見つかったタクミは、依頼人に付き合って昨日寝不足だから仮眠を取ると詰め所に行く。
俺も詰め所で荷物を整理して、ギルドに預けていた使っていなかった装備の点検をしていた。
みんな集まって来たのはいいが、肝心の依頼人が来て居なかった。
「ここに来る前に依頼人の所に寄って来たからもうすぐ来ると思うよ」
タクミが言う。
「依頼人って誰なの?」
依頼内容も知らずに加わったアカネが言うと、同じくサラも頷く。
俺は昨日後ろ姿だけ見たが、中年って感じの体系の男性だったな。
「ポールさんって言うんだけど、外国人でダンジョンのモンスターの生態を研究してて、世界中のダンジョンを回ってるんだって。モンスターだけじゃなくてダンジョンの植物や鉱物なんかも採取するから、人手は多い方が良いってみんなが来る事を喜んでたよ」
タクミが答えるが、そう言えば報酬を聞いていなかった事に気づく。
ダンジョンに潜る事が目的で潜っている内に金が貯まって行ったから気にした事がなかった。
かなりの大金になったが、大金が入ると何処からともなく武器屋や道具屋がやって来て、装備品やアイテムに消えて行ったなぁ。
……あれ?
俺ってカモ?
……。
まあ良いか。
「報酬は一人づつじゃなくて、依頼全体で貰ってまーす!」
イクミが言う。
「ただし、レアモンスターを見つけると特別ボーナスが出るので、それは見つけた人にあげまーす!」
パンパカパーン!って音が聞こえそうな様子で発表するが、いや実際に口でも言ってるが、あまり盛り上がらない。
サラは大聖女、アカネも大旅館のお嬢様なので、お金に困ってないのだ。
イクミたちだって、ギルドで冒険者をしている分には食うには困らないし、お金にはあまり頓着してないだろう。
実際の所、俺たちみたいに好きでダンジョンに出入りしてる奴らにとっては、ダンジョンで起こる様々な現象を解明してくれる研究者の方がありがたい。
俺たちは、自分たちが使っている魔法についてもよく分かっていないんだ。
「オクレテ、ゴメンナ」
と言いながら、ポールさんがやって来る。
日本語は上手くないらしい。
「あ、忘れてた!コレ飲んで」
タクミに渡されて飲んだのは、『時の女神の魔法水』だ。
飲むとダンジョンの魔力が通じる所でのみ、魔法の言葉が使えるようになる。
このダンジョンを作った人達の言葉ではないかと言われているが、ダンジョンの成り立ち自体が謎なので、この言葉自体も最重要な謎とされている。
魔法の呪文のルーツとされているが、言語の専門の研究者によれば、全く違うルーツの言葉も混じっているとかで、訳が分からない。
ともかく、ダンジョンの魔力が漂って来るこのギルド内では、この古代の魔法語を使って意思疎通が出来る。
「皆さん、今日はよろしくお願いします」
と、片言だったポールさんが言う。
言葉がスムーズに通じるだけで印象が違う。
昨日思った通りの中年体型なんだが、想像よりはお腹が平らで引き締まっている。
流石にダンジョンを歩き回らないといけないだけあって、ダンジョン関係者は研究者でも体が鍛えられてる。
「今日は6階より先の階層のモンスターの観察と、出来たらレアモンスターに会いたいと思ってるんですよ」
ポールさんが言うレアモンスターとは、ダンジョンに稀に現れるモンスターだが、よく知っているモンスターでも通常住んでいる階以外で見かけたらレアモンスターと言われる。
ダンジョンの階層はまだまだ続きそうだから、今見かけるレアモンスターは先の階の通常モンスターなのだろうと言う理屈だ。
「でも、レアモンスターは会いたいとと思って会えるものでは無いですよ?」
アカネが言う。
「大丈夫です!レアモンスターの粉を持って来ましたから!」
と、自信たっぷりに言うポールさん。
「レアモンスターの粉?って何ですか?」
しかし、アカネが全然聞いたこともないって調子で質問する。
俺も聞いたことがない。
「レアモンスターの身体を砕いて粉末にした物ですよ。持っていると同じ種類のレアモンスターに出会える確率が増えると言われているんです」
ちょっと興奮気味に話すポールさんだが、本当だろうか?
「レアモンスター自体に合う事が本当にレアなので、確率が上がるかどうかも研究段階なんですがね」
と、今度は少し自重気味に言う。
じゃあ、確率が上がるって誰が言い出したんだろう?
俺たちはダンジョンに移動する。
入り口から4階へ直通の下り坂になったトンネルを行き、そこからは階段を繋いで6階まで降りる。
俺やサラやアカネなどの、ダンジョンに行き慣れたメンバーだけならそう時間がかからずに降りて来れるのだが、ポールさんがいると難しい。
慣れてない以上にポールさんは研究者なので、見慣れないものを見つけるとじっくり観察して採取したがる。
採取したものはガラス瓶など専用のケースに入れるのだが、このケースがなかなか嵩張って、俺たちは一人づつかなりの量を持たされた。
最初は俺たちも待っていたのだが、流石に目的の6階以降の探索が出来なくなってしまうので、ポールさんを引っ張って先を進んだ。
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