嘘の色と共にポメラニアンが守ろうとしたものは?

 主人公の世界は、“見苦しい嘘”で愛犬を失ったあの日から止まったままです。
 零司くんがずっとお守りにしていたお芋ボーロが引き寄せたのは、ポメラニアンのくーちゃんと飼い主のことはちゃん。
 二人と一匹が揃い、小さな奇跡が生まれていきます。

 そこにいるだけでもふもふ愛らしいくーちゃんですが、失った愛犬と重ねて見ている零司くん視点のくーちゃんは、更に愛情と哀しさみたいなものが混じっていて、私自身も昔飼っていた豆柴を思い出しました。

 くーちゃんが示す『嘘の証拠』を二人で追う中で、制裁者として孤独に動いていた零司くんが、誰かのために行動するようになっていき、助けてくれる仲間が増えていく変化も魅力です。

 登場人物より一歩先に読者が推理できる仕掛け。ミステリーとしても巧みで、解答編の前にもう一度読み返したくなる作品です。

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