第18話 文化祭の終わりに
文化祭の朝、空は晴れ渡り、爽やかな風が校舎を包んでいた。
愛華と蒼馬は手を繋ぎ、笑顔で校門をくぐる。彼らの周りにはすでに多くの生徒が集まり、期待に満ちた空気が漂っていた。
まず訪れたのは、クラスの喫茶店。二人は窓際の席に腰を下ろし、蒼馬が椅子を引く紳士的な姿に、愛華は内心ドキドキしていた。
「今日のメニューは何にしようか?」と蒼馬が尋ねると、
「私はケーキセットがいいな」と愛華が笑顔で答え、二人で仲良くケーキを分け合った。
次に向かったのは、校庭に設けられたフォトスポット。色とりどりの花や飾りが施されたブースで、二人は写真を撮り合う。
「もっと近くに寄って」と蒼馬がふざけながら言い、
愛華は笑いながら彼に寄り添う。
「これ、SNSに載せてもいいかな?」
「いいけど……見られたら照れるな」
二人の笑い声が響き、周りの生徒からは「かわいい!」という声が漏れた。
続いて挑戦したのは、クラス企画の脱出ゲーム。
暗い校舎の一室に閉じ込められ、二人は協力しながら謎を解く。
「ここはどうかな?あのヒント、覚えてる?」
「そうそう、あの絵の裏にヒントがあったよね」
緊張感の中、蒼馬が自然と愛華の手を握り、励ますように微笑んだ。
愛華も安心して笑顔を返す。
脱出ゲームの最後の謎を解いて教室から出ると、文化祭のにぎやかな声がまた二人を包み込んだ。窓の外からはクラスメイトたちの「お疲れ〜!」「いい感じ〜!」という声援が飛んでくる。
蒼馬がふと愛華の手を握りしめ、優しく微笑んだ。
「今日、一日一緒にいて楽しかったな」
愛華も自然と笑顔がこぼれる。
「私も……先輩と一緒だと、なんだか特別な気持ちになるよ」
夕暮れの柔らかな光が、二人の顔をほんのり赤く染めていた。
蒼馬は少し照れながらも、そっと愛華の髪を撫でる。
「ねえ、最後にもう一つだけ……いい?」
愛華は一瞬ドキッとして、うなずいた。
蒼馬はそっと顔を近づけ、ほんの少しだけ間をとってから、そっと唇を重ねた。
その瞬間、世界が静かに変わったように感じた。優しい温もりがじわりと心に染みて、胸の鼓動が高鳴る。
愛華の目は閉じられ、彼のぬくもりを感じながら、時間がゆっくりと流れていった。
唇が離れると、蒼馬は照れくさそうに笑いながら、
「ありがとう。これからもずっと、そばにいてくれよな」
愛華も恥ずかしそうに微笑み返し、
「うん、ずっと一緒に」
周りの楽しげな声に包まれながら、二人はゆっくりと文化祭の余韻に浸った。
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