第17話 文化祭デート
文化祭2日目。クラスの喫茶店の仕事を午前で終えた愛華は、昇降口で待つ蒼馬の姿を見つけて、小さく手を振った。
「待った?」
「全然。むしろ早すぎるくらい」
蒼馬は笑って、愛華の手を自然に握る。誰にも隠す必要のない関係になった今、手のぬくもりはより近く、より強く感じられた。
最初に2人が向かったのは、お化け屋敷。クラスメイトが作った割には、暗さも音響も本格的で、愛華は思わず蒼馬の腕にぎゅっとしがみついた。
「……ちょっと怖すぎない!?」
「ん、怖がってる愛華、かわいいなって思ってた」
その一言に、愛華は顔を赤らめながら蒼馬の腕をつねる。「そういうの、言わないの!」と文句を言いつつ、嬉しそうな笑みを浮かべる愛華に、蒼馬もつられて笑った。
次は、同じ学年の演劇。ラブストーリー仕立てのストーリーで、キスシーンでは周りが「キャー!」と騒ぎ、愛華は思わず蒼馬を見た。
「……あれって、演出だよね?」
「うん、でも俺だったら、もっとリアルにできるかも」
またその調子、と小声でつぶやきながら、愛華は蒼馬の手をキュッと握り返した。
最後に2人が訪れたのは、他クラスの和風喫茶。お団子と抹茶を並んで食べながら、ゆったりした時間を過ごす。
「こうして堂々と隣にいれるの、夢みたいだね」
「夢じゃないよ。これからずっと、現実にする」
蒼馬の言葉に、愛華はこくんと頷く。
店を出たところで、数人のクラスメイトが2人に気づいた。
「あっ!2人でデート!?」「えー!ほんとに付き合ってたんだ!」
ざわつきの中、蒼馬は愛華の肩を引き寄せて、堂々とその場でハグをした。
「はい、付き合ってます。なのであんまり冷やかさないでください」
「きゃー!!なにその王子対応!」
「かっこよすぎるんだけど…!」
「月瀬さん、ずるい〜!!」
ざわめきに包まれながら、愛華は蒼馬の胸に顔を預ける。ドキドキする。
嬉しくて、恥ずかしくて、でも何より幸せだった。
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