第15話 秘密の終わり

放課後のチャイムが鳴り終わる頃、教室はいつもよりざわついていた。

数人の生徒がスマホの画面を見せ合いながら、ひそひそ声で話している。


「見てこれ!進堂先輩と月瀬さん、ソフトクリームのとこでキスしてる写真だって!」

「マジで!?そんなの撮られてるなんて信じられない!」

「もうクラス中で話題だよ!」


ざわざわと広がる噂に、教室の空気が一気に変わる。


その時、愛華と蒼馬はまだ気づかず、別の場所で話していた。


教室のざわめきを知らない二人は、穏やかな笑顔で話を続けている。


そんな様子を遠くから見ていた結衣が、携帯を握りしめてそっと近づいてきた。


「愛華……ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど」


愛華は少し不思議そうに顔を上げる。


結衣は言葉を選びながらも、スマホの画面を見せた。


そこには、まるで映画のワンシーンのように鮮明に撮られた、二人がソフトクリームのキス寸前で見つめ合う写真が写っていた。


「これ、もうみんな知ってる。隠しきれないよ」


愛華の胸がぎゅっと締め付けられる。


「え……」


その言葉を聞いた蒼馬もふと目をやる。


スマホの画面に映る二人の姿を見た瞬間、彼の表情が一瞬にして変わった。


「……これって……」


教室中のざわめきが一気に耳に届き、二人の秘密が確実に広まったことを感じた。


愛華は動揺を隠せず、視線を落とす。


蒼馬はゆっくりと深呼吸をして、冷静さを取り戻そうとしている。


「……まあ、そうなるよな」


そう呟きながらも、彼は決して怒ってはいなかった。むしろ、どこか覚悟を決めたような静かな眼差しだった。


「愛華、これからは隠さなくていい。堂々と一緒にいよう」


その言葉に、愛華は小さく頷き、ほんの少しだけ笑みを浮かべた。


教室のざわつきは続くけれど、二人の心は少しだけ軽くなった気がした。


夕日に染まる教室の中、二人の新しい関係が静かに始まろうとしていた。

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