第9話 はじめてのデート
朝の光が窓から柔らかく差し込む。愛華はいつもより少しだけ早く目を覚ました。
今日は特別な日。蒼馬との初めてのデートだから。
鏡の前でワンピースの裾を整えながら、胸がじんわりと熱くなるのを感じた。
「どうしよう、緊張するけど……楽しみだな」
待ち合わせ場所の公園には、蒼馬がすでにいて、凛とした姿で彼女を待っていた。
目が合うと、にっこりと微笑んで軽く手を振る。
「来てくれてありがとう」
彼の声は落ち着いていて、それでいて特別な温かさがあった。
手を差し出され、照れくさそうにしながらも愛華はそっと握った。
「ありがとう、待たせちゃった?」
その手の大きさと温もりに、胸がぎゅっと締めつけられる。
歩き出すと、蒼馬がさりげなく歩幅を合わせてくれて、少しだけ肩が触れ合う。
「気づいてた?」
蒼馬が軽く笑いながら言った。
愛華は顔を赤らめて、首を振った。
「ううん、全然」
二人で歩く通りは、午後の柔らかい日差しに包まれている。
蒼馬が、時折さりげなく髪を耳にかけてくれる仕草に、愛華はドキドキが止まらなかった。
「なんでそんなに優しいの?」
「今日はゆっくり楽しもう」
彼の言葉に、自然と笑顔がこぼれる。
カフェに着くと、蒼馬が椅子を引いてくれる紳士的な一面。
「お先にどうぞ」
そのちょっとした気遣いに、愛華は胸がときめく。
「ありがとう。ほんとに、気がきくね」
ケーキを一緒に食べながら、蒼馬は面白い話をしてくれて、二人の笑い声が店内に響く。
「蒼馬くんといると、時間があっという間だね」
そう言うと、蒼馬は少し照れくさそうに目をそらした。
外に出ると、小さな観覧車の前。蒼馬が愛華の手をそっと握った。
「大丈夫?」
少し高いところが苦手な愛華に、優しく声をかけるその瞳に、彼の優しさが溢れていた。
「うん……ちょっとドキドキするけど、蒼馬くんがいれば怖くない」
ゴンドラの中、街の灯りがキラキラと瞬く。
蒼馬の隣で感じる温もりに、愛華は思わず目を伏せる。
「こうして一緒にいられるだけで、幸せだ」
彼の言葉に胸がいっぱいになる。
夕暮れの公園、ベンチで並んで座ると、蒼馬が軽く肩に触れてくる。
「明日も、会える?」
「うん。絶対に」
その質問に、愛華は小さく頷き、笑顔で答えた。
「ずっと、こうやって一緒にいられたらいいな」
二人の距離は確かに近づいていた。
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