第8話 幼なじみ
放課後の教室の窓から差し込む夕陽が、愛華の頬を優しく照らしていた。
彼女は席に座ったまま、外の景色に視線を落としていた。
蒼馬からの告白がまだ鮮明に心に残り、胸の中は複雑な気持ちでいっぱいだった。
嬉しさと戸惑い、期待と不安が入り混じり、心臓が少し早く鼓動しているのを感じる。
「明日は、初めてのデートだって思うと……」
愛華は小さく息をつき、無意識に手を握りしめる。
どんな場所に行くのか、どんな会話をするのか、蒼馬の笑顔はどんなだろう。
頭の中で想像が膨らみ、頬がほんのりと熱くなる。
その時、教室のドアがそっと開き、瀬戸海琉が入ってきた。
彼は誰にでも優しく接する、クラスでも人気のある男子だった。
幼なじみの愛華を静かに見つめる彼の瞳には、言葉にできない想いが隠されている。
「愛華、最近進堂先輩と仲良さそうだけど、なんかあるの?」
海琉の声は優しいけれど、どこか緊張した響きを含んでいた。
彼の心の中には、愛華をただの幼なじみ以上に思う切ない気持ちがあった。
海琉は言葉を選びながら、少し照れくさそうに続けた。
「……何でもないよ。気にしないで」
愛華はその視線に少し戸惑いながらも、笑顔で答えた。
「ううん、別に……」
心の奥では、海琉の気持ちに気づきつつも、それ以上の言葉は出せなかった。
その日の帰り道、愛華は静かな夜空を見上げながら、自分の気持ちと向き合っていた。
「蒼馬くんと一緒にいる時間が楽しみ……でも、どうしてこんなに緊張するんだろう」
胸の奥のざわつきは消えないけれど、それでも少しずつ前に進もうとしている自分を感じた。
翌日、待ち合わせ場所の公園で蒼馬と会った。
彼は少し照れたように微笑み、手を差し出す。
「来てくれてありがとう」
その言葉に愛華は胸が温かくなり、自然と笑顔がこぼれた。
二人の時間はゆっくりと流れ、未来への期待が静かに膨らんでいった。
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