第1章 闇の同盟
エジプト・カイロの国立博物館――その地下倉庫で、警備員が絶叫を上げた。
監視カメラは一瞬、白いノイズに覆われ、次の瞬間にはすべての映像が途切れた。
警備班が駆けつけた時、そこにあったのは空になった石棺と、壁に焼き付いたような古代の象形文字だった。
“目覚めの刻、再び来たれり”
一方そのころ、ロンドンのベイカー街では、シャーロック・ホームズが同時多発的に発生した事件の“接点”を探っていた。
カイロのミイラ事件と並行して報告されたのは――
ロンドン西部、ハムステッドで発生した奇怪な窃盗未遂事件。現場には血痕と、灰になったコウモリの死骸が残されていた。
「これは……ドラキュラの再出現を示す痕跡だな」
ホームズは血痕の乾き具合と灰の散乱を見て、すぐに判断を下した。
彼にとって“死後の存在”などもはや珍しいものではない。
ワトソンは資料をめくりながら、眉をひそめた。
「だが、これが単独犯だという証拠は?」
「むしろ逆だよ、ワトソン。
この灰の周囲には“足跡”がなかった。まるで空から降ってきたように見えるが、
それよりも重要なのは……これだ」
ホームズが指差したのは、現場の壁に刻まれた奇妙な“印”。
それは円の内側に三つの尖塔がそびえ、中央には牙を持つ顔――まるで異界の紋章のようだった。
「これはカイロのミイラ事件の写真にも写っていた“刻印”と同じだ。
吸血鬼とミイラ、まったく異なる起源を持つ怪異が、同じ印を残している……偶然とは思えん」
その日、政府はホームズに“怪異の連鎖”の全貌を調査するよう正式に依頼した。
ワトソンは、報酬の規模からして尋常ではないことを察する。
「まさか、本当に“モンスターたちが手を結んでいる”と?」
「それを確かめるのが、我々の役目だ」
そして夜、ベイカー街に一通の手紙が届く。
封筒には差出人の名はなく、ただ例の刻印だけが黒いインクで描かれていた。
中にはこう記されていた。
> “選ばれし観察者よ
> 夜が来る。目を開けよ。連盟は今、形を成す”
ホームズは手紙を握り締め、冷たい目を細めた。
「“闇の同盟”……それが始まりならば、終わりまで付き合ってやろう」
こうしてホームズとワトソンは、
古き怪物たちが手を取り合い、人類の運命を動かそうとする“連盟”の正体を追い、
世界の深淵へと足を踏み入れることになるのだった。
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