7 別の小学校出身です
三十分後、菱原さんからメッセージが届いた。
『ミコトさん、現在、クラスラインの四十人のうち、二十五人がアンケートに回答してくれました。結果はこうでした』
ミコトは、メッセージと共に送られてきたアンケートの結果を見て驚愕した。
「日本:十五人 インドネシア:十人」
インドネシアの人と入れ替わっている人が十人もいるのが驚きだが、日本に住む人と入れ替わっている人も十五人と多い。そして何より、この二か国以外の人と入れ替わっている人がいない。
『菱原さん、これって偶然なんでしょうか? さっき、四人のうち二人が同じ国なだけで奇跡だって驚いたんですけど、それが十何人の規模で起こるなんて、あり得ますかね?』
ミコトは不安になった。何が何やら分からないままこの騒動に翻弄されているのに、何一つ解決されずに分からないことが増え続けている。
また、一分も経たないうちに返信が来た。
『これは流石に偶然ではないです。何かしらの理由で、ある規模の集団が、別の国の集団と入れ替わっています。今回入れ替わったインドネシアではLINEが使われています。だから入れ替わった先の人たちと連絡が取れているのでしょう。
では入れ替わった先がLINEを使っていない地域だとどうなるでしょうか。恐らく、メッセージを送っても返信が来ません。
先ほどのアンケートで回答してないのが四十人中十五人。この十五人は私のアンケートへの協力要請に気づかなかった、という可能性もありますが、LINEを使っていない国の人たちと入れ替わっているとも考えられませんか。
つまり、クラスの人たちは大きく分けて三つ、日本、インドネシア、その他のどこかLINEが利用されていない国の人と入れ替わっているのではないでしょうか』
なるほど、とミコトは思った。クラスの人たちはまとまって入れ替わっていて、しかもその入れ替わり先が綺麗に三つに分かれている、ということか。
そして、ハルカと入れ替わっている人は私たちのやりとりを無視していた訳ではなく、そもそもラインを使っていない国の人だったということだ。
だが、なぜ綺麗に三つに分かれているのだろう。
ミコトが腕組みをしていると、菱原さんからメッセージが来た。
『ミコトさん、一つ質問があります。クラスの人、例えば大野さんとは、同じ地域に住んでいますか? 具体的に言うと、同じ小学校出身なのか、それとも別の出身なのかを教えてほしいです』
ミコトはこう答えた。
『大野くんとは別の小学校出身です。わたしは西小、大野くんは南小です。うちの中学校は三つの小学校出身者から構成されていて、西小、北小、南小があります』
そう、大野くんとは中学校からの知り合いなのだ。他にも、仲良しグループで言うと、アヤノとコノミが北小、サヨが南小、そしてミコトとハルカが西小出身である。それぞれの小学校は少し離れた距離に位置している。
もしかして、この三つの小学校と、入れ替わり先の三つの国がリンクしているのだろうか? でも、小学校と国だなんて、規模が違いすぎるような……。
ミコトはこの謎を解こうと頑張ってみたが、考えてみても何も分からなかった。
ピコン、と通知が鳴った。見ると、仲良し五人組のグループラインでエレナさんが発言していた。先ほどミコトが送った、インドネシアに住む二人はそれぞれどの地域に住んでいるのかという質問への返答のようだ。翻訳してみると、『私はモロタイ島に住んでいます』という内容だった。
どんな島か気になって調べてみると、きれいな海と森の画像が出てきた。ミコトがそれに見惚れていると、また通知が届いた。チカさんからのメッセージだったが、何やら様子がおかしい。インドネシア語なので内容は分からないが、『!』や『?』が多用されている。
ミコトが急いで翻訳に掛けると、
『そうなんですか⁉ 私もモロタイ島に住んでいます! まさか同じ島に住んでいるなんて‼ びっくりしました!』
という内容のメッセージだった。
サヨと入れ替わっている田中さんが『え! お二人とも同じ島に住まわれているんですか⁉ すごい偶然ですね~』とのん気に驚いている。
ミコトも少し驚いたが、この中では恐らく一番冷静だった。これもただの偶然ではないのだろう。きっと何か原因がある。
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