4章-閑話

 さて、あと紹介していないTOP3の最後の一人はジャストミートだ。こいつは確かに強い。だがチームを組んで戦うと、仲間だからこそ鬱陶しくて仕方ない奴だ。


 具体的に解説すると、戦闘時にどうしても一方的に不利になる死角からの不意討ちや騙し討ち。そう言うものに全く引っかからない。まるで戦場を上空から見下ろしているかのように把握できるのだ。

 というと格好いいが、その把握の方法が問題なのだ。視覚で見ているわけでもない、嗅覚で敵が分かるわけでもない。聴覚で感知しているのだが、別に敵の発する音を聞いているわけではない。周囲の様子に対して警告が聞こえるのだ。だがその警告がサービス過剰すぎる。


 おおっと、前方の木陰に丁度日光が射さない暗闇があるぞ、あーっと、すでに負のエネルギーが集まって実体化寸前だ。これは間に合わない。実体化してしまったぞ、こいつは何者だ!? スライムにしては大きいぞ。巨大な口が開いた。餓鬼玉だ。そのまま滑るように下草の陰をすり抜け・・・いや違うぞ、下から襲わない。木に這い登って頭上から襲うつもりだ。そのまま目の前にいるフリーマンに、不意打ちのダイビング噛みつき攻撃か。鎧をつけていないフリーマン、出血が避けられない噛みつき攻撃はぜひとも避けたいところ。いやフリーマン、跳びかかる餓鬼玉に合わせて振り向いたぞ。そのまま斧で脳天唐竹割りジャストミーーーート!


 ・・・まあ、こんな感じだ。これは街道を歩いている時に不意討ちを警告してくれた時だが、普通に歩いている時や、もよおして木陰で用を足している時であっても、そのことに対する詳細な解説が流れてくる。おかげで大抵の女性勇者はこいつとパーティーを組むのを避ける。


 無論、宿で寝ている時でも、仕事中でパーティーを組んでいるとジャストミートが認識している間は四六時中休み無しに聞こえてくる。おまけに耳を塞いでも全く無駄で、この声は脳内に直接響く。言っちゃなんだが、モンスターに傷つけられない代わりに不眠症になる。


 そんなわけで、この町にたむろする勇者の中では恐らく最強なのだが、誰もチームを組もうとしないので総合的な戦力では一枚劣る。当人も開き直って「孤高の勇者(笑)」などと言って笑っているが、負け惜しみというわけではなさそうなのが救いか。

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