4章 大それた?夢

     ――― な!? は、ハハハハハハ ・・・



           ――― なんと大それた ・・・






   ――― 本当の意味を知らんのじゃな  ・・・



          ――― 認識して口に出した以上 ・・・





「うわああああっっぁっ!」


 うーん。バッドモーニング。

 寝ぼけ眼で寝床から這い出て共用ロビー(会議室・食堂兼用)でコーヒーモドキ(苦みが出るほど深煎りして濃く入れた麦茶)を啜っていると、俺がうなされるのに慣れている連中にとってもいつも以上の大騒ぎだったらしく、心配したクラウンが声をかけてきた。


「随分うなされてたみたいだね」


「う~ん。最近少し夢の内容を覚えてるんだよな」


「え? 前世のイラン事だけじゃなく、何か重要なことを思い出したのか?」


 イラン事はないだろうと言いたいが、確かに思い出すのはこっちで役に立たないアニメの話とかばかりだもんなあ。それだけ印象に残ってるんだろうか?


「いや何か、あの世だと思うボヤけた所で婆さんに笑われてた」


「え? 婆さん? 閻魔大王とか、何か女神っぽい人とかじゃなくて?」


 どうも俺のあの世での記憶はかなりレアらしい。それで思い出せないようになってるのか?


「しかも笑うって。それはやっぱり、とんでもない壮大なお願いをしたんじゃあ?」


「残念ながら、その辺りはさっぱり」


「しかし惜しいなあ。完全に思い出せれば、もしかしたら魔王との戦いも終わるかもしれないのに」


「いやいやいや。俺、忘れてるのがたとえ戦う能力だったとしても、モンスターじゃなくて人間を・・・それも同じ日本人を殴るのは嫌だぞ」


 そう、この世界やたら勇者がいると思ったら、お約束のように魔王もいる。それもやたらと居る。それこそ一つの街に一人担当の魔王がいるんじゃないかというくらい居る。下手したら街の近所に複数の魔王がいる。


 何故かと言えば、俺たち転生した勇者と呼ばれる連中が、いわゆる闇墜ちしたのが魔王と呼ばれるからだ。よくあるのが、無限に出てくるモンスターとの戦いに心をすり減らしたパターンと、逆にモンスターとの戦いで調子に乗ってほかの色々な者と戦いたくなったバーサーカーだ。


 後者は分かるが前者はどこが魔王なんじゃいと思うところではあるが、どうやら深い絶望と言うか負の感情が、モンスターを生む原料になるらしい。やはりマイナスの精神エネルギーは怪物を生むし、涙の味を知っている男が愛と勇気を教えねば解決しないんだな。

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