3章 怪しい男登場

 村に戻るフリーマンと別れて、俺は街に向かう。山道を大八車を押して上るのは流石に辛いので、今度は後ろ歩きしながら引っ張る。これはやったことがある人なら、こっちの方が運びやすいと実感してもらえるだろう。

 

 村から街への街道は整備されているため、モンスターも先程のスライムや、精々巨大な口を開いて噛みつきをしてくる餓鬼玉しか出てこない。

 外見のイメージで名前を付けているから、つくづく名前に統一感が無いなと思う。いや、ゲームに出てくるモンスターの名前も、元ネタ調べれば恐らく言語や地域バラバラだよな?

 

 山を越え、夕方近くになってやっとのことで街に着いた。渡されたリスト通りに荷物を各商店やら、領主はじめ金持ちの家やらに卸していく。

 荷車なので裏道を通らねばならないのが少々辛い。最近やっと覚えてきたが、街の区画ごとに大通りがある表通りから建物の隙間に入るように裏道に入ると、馬車が通りやすいように格子状に整備されているので、逆に目印が分からない。

 

 それ以上に、荷を下ろしてもそのまま村への荷物を積み込むため、荷車がほとんど軽くならないのは結構きつい。だが他で貢献できない以上、運送の仕事くらいは遂行せねば、などと柄にもなくまじめなことを考えて気を紛らわす。結局日没直後、あたりが暗くなる前にようやっと仕事を終えることができた。

 

 セカンドハウスと言うか宿屋と言うか、転生日本人が管理する補給拠点のような家があるので、いつもそこに泊まることになっている。なんかトラックステーションみたいだな。

 

 荷車を裏庭に停めて受付していると、泊り客(?)の中に街にいることが珍しい奴がいた。黒いローブに肩までの長髪、年齢不詳の童顔は糸目で笑顔を絶やさない。しかして実際は、この辺の前世日本人の中では長老格の一人だ。外見だけ見ると絶対石田声だとか言われる男、自称”役立たず”のクラウンだ。


「やあやあ。珍しいね」

「そりゃ、こっちのセリフだ。最近はもうこっちに来ないのか?」


話しているセリフだけだと何が何だか分からないだろうが、何の話かと言えば転生して来る日本人の話だ。


「とりあえず僕の行動範囲では、この一月変わりないね」


 この町の近所に転生してくる日本人が現れるスポットがあり、こいつはそこで待機して、この世界の説明やら何やらしてくれる。いわゆるチュートリアルおじさんだ。


 なぜそんなことをしているかと言うと、こいつの能力が特殊過ぎて一切戦闘行為ができないからだ。

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