2-閑話
さて、この世界に転生した勇者たちは、大抵特殊な力を授かって・・・というよりリクエストして与えられている。だが強い力はまるでプラスマイナス0にするかのように欠点も大きい。
先ほどのインベントリの能力が、仕舞った物の重量は普通にあるといった風にだ。
それを踏まえてフリーマンの紹介をしよう。こいつは転生するときに「何かに縛られたくない」と願った。その願いはかなったのだ。こいつは法にも義理にもしがらみにも縛られず、自分の意志を貫くことができる。
そして、物理的にも縛られない。ロープで雁字搦めにしようが、ネットで全身を包もうが、するりと抜け出してしまう。何なら密室でも閉じ込められない。
しかしその反動と言うか、体に縛るようなものを身に着けられない。鎧どころか普通の服すら着ることができないのは、割と致命的な欠点に見える。
流石に最後の良心なのか、パンツは履くことができるのだが、それでも縛り付けるフンドシは六尺も越中も身に着けることはできない。どうやら体の動きを阻害しないほうが良いようなのでピチピチのビキニパンツを穿いている。
そんな訳で「昔、格闘物の漫画で読んだんだ」と言って体に粗塩を摺り込み、たわしでガシガシと磨いている。そのトレーニングのおかげか、単に裸で動き回っているから慣れたのか、奴の体の皮膚は足のかかとの様に分厚くしなやかになっている。どう見てもレザーアーマーより弱そうだが、何も支度していないよりははるかにマシというものだろう。
縛り付けるのが駄目なのは足も同じだ。ブーツは言うまでもなく、カリギュラ(編み上げサンダル)もすぐに足から脱げてしまうため、最近では草履を特注しその靴底に滑り止め兼防水用に革を張り付けている。いわゆる雪駄というものだ。
頭も、ヘルメットのように顎紐を縛るようなものはNGだった。ただ大きなサイズのバケツのように、どこにも固定しないように作ったものを被るのは大丈夫だったので、目の部分に穴をあけたバケツのような兜を被っている。とは言え激しい動きの中で、回転して視界をふさぐと大変なことになるから、目のスリットはかなり大きい。具体的には首が回転する手品の時に被るアレのような感じだ。
そして、胴体も同じような条件なら良いのではと色々試したところ、広い布をただ肩からかけているだけならそのまま活動できるが、トーガの様に身体に巻き付けようとしたら脱げたり破れたりしてしまう。そんなわけで寒い日の毛布から日除けの薄布、雨の日の油紙まで色々な状況を予想しており揃えて使い分けている。
総合すると、穴をあけたバケツのような兜をすっぽり被った頭部。ビキニパンツ以外何もつけていない胴体の肩から毛布を掛け、足は雪駄履き。手には好んで使う武器である斧。
何かどこかのゲームに出てくる山賊のような格好だと、皆こっそり思っている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます