2章 日常の風景
――― 我らは、いわゆる ・・・
――― 予想はつくと思うが、本来は ・・・
先日は夢の中でも、白い光が満ちて眩しく何も見えなかったが、今日は何か人影のようなものを覚えている。
さて今日は仕事で遠出する日だ。この世界、石を投げれば50%の確率で当たりそうな密度で「勇者」と呼ばれる前世で日本人だった人間がいるが、勇者の呼び名に胡坐をかいて遊んでいいわけではない。だからと言って、新聞配達や工事現場の交通整理で飯を食っているわけではない。この世界に呼ばれたのは、この世界で俺たちにしかできないことがあるからだ。と、聞いたことがある。
こちらの世界に転生した人間は、基本的に前世のことはよく覚えているが、こっちの世界のことは全く知らないでやって来る。そんなわけで、迷える子羊にこっちの常識を色々教えてくれる、親切なチュートリアル勇者がいるのだ。それが勇者にしかできない仕事かというと違うに決まっているんだが、説明を始めるとややこしいので、今は省く。
で、噺を戻して俺たちにしかできない仕事とは何かといえば、まあ単純な話だがモンスターの討伐だ。
この世界のに転生した俺たちのフィジカルは相当に強化されている。はっきり言って何の能力があるか分からない俺や、戦闘に向かない能力を選んだ連中ですら、酒を満載にした大樽、およそ重量1トン程度の物を背負って軽快にスキップできるくらいだ。
力自慢の連中に至っては、1立米(立方M)の切り石を64個持ち上げられる者さえいたそうだ。流石に歩けなかったらしいが。ちなみに1立米などという体積の物をどうやって64個も持てたかというと、いわゆるインベントリやストレージと呼ばれる大量の物体を懐に仕舞える能力持ちだったらしい。
ただし重量は一切軽減されないという欠点があり、能力を生かすために必死で筋トレした結果、それだけの物を持てるようになったと聞いた。
石の密度をざっと2と考えても、合計128トン。話をしてくれた奴は、
「つまり重さ100トンのレスラーを、ブレーンバスターで投げられるんだ」
と言っていたが、なぜ力のほどを説明するたとえにレスラーを、それもブレーンバスターという技を選択したのか、じっくり問い詰めたいと思ったのは俺だけではないと信じたい。
そして、これだけのフィジカルを持つ俺達でも、この世界の人間には適わない。だが何故か、モンスターに対しては俺たちの方が強いのだ。その奇妙な3竦みのせいで、俺たちという人材の需要があるのだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます