第3話:バトルロイヤル終了
賞について:
このバトルロイヤルでは優勝以外に3つの賞があり、それぞれ1人ずつ受賞者が選ばれる。
・スペック賞
異能力の強さ、武器も含めた参加者本人の強さ、戦略性、戦闘スタイルなどを考慮に入れて、バトルロイヤルを戦い抜く総合的な能力が最も高いと思われる参加者に贈られる。
・タイマン賞
シンプルな1対1の対決を想定した場合に最も強いと思われる参加者に贈られる。
・リバース賞
事前予想を覆して好成績を収めた参加者に贈られる。
――――――――――――――――――――
バトルロイヤルが終わり、表彰式が始まろうとしていた。ステージ上には運営によって蘇生された参加者たちが揃っている。
「あーあ、もう少しで優勝できたのに」
「敗因は勝ったと思って奇声上げたことだな」
「うるせぇ」
(せめて歓声って言ってくれよ恥ずかしい)
「全く、私に勝っておいて優勝しないとか許せないんだけど」
「? うおっ、びっくりした。霊泉か」
いつの間にか霊泉 葵が重影の隣に来ていた。
「どうやって私の接近に気付いたの? 私の透明化は影まで消せるし、音も全く立てて無かったはずなんだけど」
「俺は鼻が良くてな。いつも嗅いでる匂いだったから気付いたんだよ」
「きもっ、初対面なのにどうやっていつも嗅ぐのよ」
「え? いや俺だよ俺、同じクラスの重影 翔。3年3組4番」
「……あ、」
霊泉は重影のことを思い出したようである。
「メガネのやつだよね」
「思い出したか」
「実は視力高いの?」
「今はコンタクト着けてる」
「学校でもコンタクト着ければ良いのに」
「金掛かるから嫌だ」
重影たちが会話していると、ついに表彰式が始まった。歓声と拍手がステージ上に集まっている参加者たちを包む。
「今大会のバトルロイヤルを制したのは、梨木 穂乃果選手です! 事前予想を覆す見事な勝利でした。大きな拍手を!」
観客からは大きな拍手が起こり、梨木は笑みを浮かべながら優勝トロフィーを受け取った。
(事前予想最下位で優勝って聞いたこと無いな。どれくらい珍しいか後で調べてみるか)
そんなことを考えながら、重影も拍手を送る。
「チャンピオン、梨木さん。今のお気持ちをどうぞ」
「とても嬉しいです。危ない場面も多かったんですけど、終盤まで上手く立ち回れて良かったです」
「ずばり勝因を聞かせて下さい」
「最後まで油断しないことですかね」
「ぷふっ」
(霊泉って意外とすぐ笑うタイプなのかな)
「続いて各賞の発表です。まずはスペック賞。異能力の強さ、武器の扱い、戦略性などを考慮に入れ、バトルロイヤルを戦い抜く総合的な能力が最も高いと思われる参加者に贈られます」
ドラムロールが鳴り響く中、緊張が走る。
「スペック賞は、序盤は他の参加者たちと共闘して優勝候補を撃破、中盤以降は透明化を活かした潜伏や奇襲攻撃と、全体を通して安定感が際立っていました」
「霊泉 葵選手です」
霊泉は前に出るとトロフィーを受け取る。
(スペック賞は霊泉か。確か今大会の3賞の賞金は1万円だったな、羨ましい)
「続いてタイマン賞。この賞は、シンプルな1対1の対決を想定した場合に最も強いと思われる参加者に贈られます」
再びドラムロールが鳴り響く。
「タイマン賞は、高い戦闘能力で序盤から終盤まで無双し驚異の9キル達成。相性の悪い相手でも冷静に隙を突く戦いが見事でした」
「重影 翔選手です」
(ああ、俺か)
重影は前に出るとトロフィーを受け取る。観客に見せつけるようにトロフィーを掲げると、一際大きな拍手が起こる。
指定された位置につくと隣にいた霊泉が話しかけてきた。
「これでコンタクト買えるじゃん、良かったね」
「いやコンタクト代にするかは分からんけどな」
「最後にリバース賞の発表です。リバース賞は事前予想を覆して好成績を収めた参加者に贈られます」
ドラムロールが鳴り響く。
「リバース賞は、惜しくも優勝は逃しましたが、複合異能力を使った囮作戦など攻めの姿勢が高評価でした」
「閃田 祐一選手です」
閃田は前に出るとトロフィーを受け取る。
「そこ梨木ちゃんじゃないんだね」
「3級以下の大会だと3賞は優勝者以外から選ぶのが暗黙のルールらしいぞ」
「へ〜」
実況者が締めくくる。
「これで今回のバトルロイヤルは終了です。全ての参加者、観客の皆様に感謝を! そして、激闘を繰り広げた参加者の皆さんに大きな拍手をお願いします!」
観客席からは再び拍手が湧き上がる。参加者たちは控え室に転送され、バトルロイヤルは幕を閉じた。
「霊泉、入るクランってもう決めたか?」
「ううん。幾つかのクランから勧誘来てるけど、知らないとこばっかなんだよね」
「そりゃ、まだ4級だからな」
「
「来るわけねぇだろ」
「流石にか〜、でもこの感じならしばらくはフリーかな」
「……それならさ、」
「重影、そろそろ帰るぞ」
「お、安楽岡来たな」
「じゃあな霊泉、また学校で」
「うん、ばいばい重影」
霊泉と別れ、重影と安楽岡は会場の外に出た。
「さっき話してたかわいい子、誰?」
「クラスメートの霊泉 葵」
「へぇ〜、あんな子いたんだな」
ちなみに安楽岡は重影の1つ上の学年であり、春に重影や霊泉が通っている中学校を卒業し高校に進学したばかりである。
「その霊泉ちゃんは4級になってから長いの?」
「いや、先週昇級したばっかりだって言ってたよ」
「まじかよ、重影とほぼ同時じゃん。しかも2人揃って入賞してるし」
「言われてみればそうだな」
「あ、言い忘れてた」
「「うわっ」」
いつの間にかすぐ後ろに霊泉が来ていた。
「重影も4級になったばっかりって言ってたし、これ出てみない?」
そう言いながら、霊泉はスマホでデスゲームの情報を見せてきた。
「……無人島バトルロイヤル。在住地域の制限無しか。4級以下のバトロワで地域混合って初めて聞いたな」
「でしょ?」
(参加資格は5級異能力者、または4級に昇級して1ヶ月以内の者、か)
「でも5級の連中も混じってるんだろ? 弱過ぎてつまんなそうだしやめとこうかな」
「でも見て、これ。特別ルールで『賞金とは別に、1キルごとに3万円獲得できる』って書いてあるよ」
「全員ぶっ〇してやる」
「そうこなくっちゃ。データ送っとくね」
「ありがとう」
「いいなー」
「安楽岡は4級になってから何ヶ月か経ってるんだっけ。今回のは出れなくて残念だな」
「違えよ、あんなかわいい子とさらっと連絡先交換しやがって」
「はいはい。それより賞金でかいし他の参加者の情報調べときたいな」
「他の参加者か……」
安楽岡は少し考え込む。
「参加者は地域混合で4級になってから1ヶ月以内なら、もしかしたらあいつが出てくるかも」
「あいつ?」
「
(北大陸の氷使いで冬海って言ったら1級異能力者の
「冬海 氷河の関係者か?」
「ああ、そいつの弟だよ。中学1年生、初参加から今までバトルロイヤルに10回参加して10回とも優勝してる。それも無傷で」
「まじ? 化けもんだろ」
「重影とか霊泉もそうだけど、最近は異常に強い中学生デスゲーマーがあちこちで出てきてるって聞くし、4級とか5級だと思って行ったら痛い目見るかもよ」
「へぇ、そいつは楽しみだな」
重影はすぐにでも他の参加者の情報を集めたいところだったが、今日のデスゲームで走り回って疲れていたため先に家に帰ることにした。
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