EP011:SOS!氷の墓場の死闘!

 極秘任務、発令。


 偵察衛星ブルーボトルがイリア山脈の奥深くで、帝国軍実験軍団の影を捉えた。


 雪煙を巻き上げ、轟音とともに進む巨大なフルメタルビースト…………グランジラフ寒冷地仕様。


 その姿は、従来のグランジラフを遥かに超えるパワーアップ型。全身が凍てつく武器の塊と化し、反乱軍にとっては喉から手が出るほどの技術の結晶だ。


 帝国軍を誘い出せ。


 非情な指令がでる。


 仲間は……ゼロ。


 ポイントX、北極点の氷結地帯。


 そこは、雪と氷に閉ざされた極寒の死地。絶え間なく発信される救難信号SOSだ。


 幾多の反乱軍部隊が救助に向かったが、帰還した機体は一機もない。


 ポイントXの雪原には、破壊され凍りついた反乱軍ゾイドの残骸が無残に散らばる。


 反撃の余地すら与えられず、氷の墓標と化した機体たち。


 そこに潜む敵は、ただの敵ではない!


 ガミュラズ・タイフーン、出撃せよ!


 イリア山脈上空を切り裂き、吹雪を突いて降下する重武装のガミュラズ・タイフーン。


 背中の装甲は、攻防一体のアサルトシェルに換装され、帝国軍から鹵獲した無数のキャノンがその縁をぐるりと囲む。


 前後左右、どの角度にも死角なく砲門を向ける、まさに「重武装の要塞」。


 しかし、敵は予想を遥かに超えていた。


 雪原を突き破り銀色の巨影が姿を現す。


「SOSは罠だったか!」


 グランジラフ寒冷地仕様──超低温レーザを搭載した新型ゾイド。


 背負った燃料タンクから供給されるエネルギで、極寒のレーザ光を放ち、反乱軍を次々と凍結させた魔物の正体!


 そのスピード、攻撃力、すべてが規格外。


 超低温兵器を巧みに操り、信じられない高速移動でガミュラズを翻弄する。


 戦闘は一方的だ。


 グランジラフの超低温レーザが、ガミュラズ・タイフーンの寒冷地用生命維持装置を直撃。


 爆発とともに装置が機能を停止し、機体は急速に凍り始める。 コックピット内の温度が急降下し、パイロットの意識が薄れゆく。


 グランジラフは静かにその場にたたずむ。


 新たな「氷像」がこの墓場に加わる瞬間を待つかのように。


「まだだ……まだ終わらせん!」


 凍りつく寸前のガミュラズが、最後の力を振り絞る。


 アサルトシェルの三六門高加速キャノンが一斉に咆哮を上げ、雪原を震撼させる。


 炸裂する砲撃!


 しかし、グランジラフは超高速の横滑りで全弾を回避する。


 ガミュラズは背後を取られ、絶体絶命だ!!


 高加速キャノンが後方に向き直る暇もない。


 凍結が進行し、機体の動きが鈍る。


 だが、ガミュラズのパイロットの不屈の闘志が奇跡を呼び起こす。


 極寒と激戦による負荷で、ガミュラズの熱交換装置が暴走していた。


 異常な熱エネルギーが機体を包み、凍結を一時的に食い止める。


 グランジラフの精密な寒冷地対応装備が、熱負荷に耐えきれず爆発!ボトルシップ のように精密な機械が、激しい振動で故障したのだ。


 バランスを崩したグランジラフが、初めて隙を見せる。


「今だ!」


 パイロットの叫びとともに、ガミュラズはアサルトシェルの全キャノンを後方へ向けおわる


 三六門の高加速キャノンが轟音とともに一斉射撃。


 雪煙と爆炎が視界を覆う中、グランジラフの巨体が吹き飛び、氷原に叩きつけられる。


 ポイントXの雪原に静寂が戻る。


 ガミュラズ・タイフーンは、凍りついた装甲を軋ませながらも、なお立ち続ける。


 パイロットの白い震える息遣いがコックピットに響く。


 ガミュラズ・タイフーンは脚のロケットへ点火して、あっという間に遥か上空へと消える。


 一方…………。


 雪に沈んでいるグランジラフが息を吹き返す。荒々しく、サブ動力に切り替えられ、凍り始めていた装甲から湯気がたつ。


 グランジラフのセンサが不気味に光る。


「これで……終わりじゃないぞガミュラズ」


 グランジラフのパイロットは、白煙を引きながら高山の空の果てへと消えるガミュラズを見上げていた。


 新たな救難信号が、ポイントXの奥深くから発信される。時期に帝国軍の救援部隊が来るだろう。

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