EP007:決死!グランジラフ破壊作戦! 1/2
反乱軍は帝国軍の侵攻を一時的に止めることに成功している。
広大な森と、網の目の川。
大軍である帝国軍でさえも、手がいきわたらないほどの広大で複雑なウルニアの森では、帝国軍部隊はバラバラになるばかりだ。
ガリオニクス部隊が渡河する。
センサで八方を警戒している。
対岸まで遠いわけではない。
だが──川底に潜む、帝国製の優れたソナーさえ掻い潜った反乱軍FBが急速浮上する。
渡河のさいちゅうであったガリオニクスは、視界の悪い川からの奇襲に、弱点である柔らかな腹を狙われて撃沈する。
ガリオニクス部隊は撤退して、元の岸へと戻り航空支援を要請すればスネークイータが川のあちこちに爆弾を落としていく。さらに川底の土が巻き上げられて、反乱軍部隊はひっそりと川の流れにそって離脱したあとだ。
帝国軍が苦戦する事態が頻発だ。
帝国軍戦力の多くは封じられた。
だが、例外もまた、あるものだ。
帝国軍最強の大型FB、キリン型グランジラフが波飛沫をあげながら、帝国軍にとって死地同然の川へと入る。
ガリオニクスと違い。グランジラフを襲う反乱軍部隊はいない。襲った部隊はことごとく壊滅したからだ。
無敵のグランジラフだ。
グランジラフを観察するFBがいた。
野生のFBに偽装しているジャガー型ナイトストーカーは、ゆっくりと森のなかから偵察を続ける。
現在、反乱軍最大の脅威はグランジラフだ。
グランジラフを、仕留めなければならない。
だが、ウルニアの森のなかで活動できる唯一の大型FBを倒すのは並大抵ではない。ましてやグランジラフは帝国軍最新型だ。
帝国軍FBは基本的に要塞に近い。
軽装で野生の戦闘能力で戦う反乱軍FBとはそもそも違うのだ。
巨大なほど、それは顕著になる。
つまりはグランジラフよりも小型のFBで、グランジラフの装甲を貫くことも、火力に耐えることも不可能ということだ。
ならば数で攻める!
大ウルニアのジャングルが赤く染まる。
緑の海が夕陽に焼かれ、青紫の空には星と月が輝きをましていき、やがて夜がくる。
虫は鳴らす金属音、木のきしみ……。
ただの気気でさえ怪物と見間違う不気味な闇が、静かに満ちていたが──静寂じゃ破られる。
照明弾がうちあがり、闇が払われた!!
ジャングルのなかに反乱軍の大部隊だ。
メガデウム、カノンリウム、ボアコンダ、他にもカバ型であるヒボバンダスまで含まれている。
牙と顎をもつものはその破壊力を高めるための爆砕ボルトと油圧装置が増えている。さらには反乱軍としては異例なほど銃火器をくくりつけて、火力を高めている。
「突撃ー!」
中型FBとしては重量のあるヒボバンダスを先頭に、反乱軍部隊が突進を開始する。
夜襲だ──帝国軍陣地から反撃がくる。
帝国軍流に改造されたFBが、陣地にしっかりと体を沈めて猛射してくる。曳光弾が網の目、あるいは、流星のように降り注ぐ。
反乱軍はとまらない。
メガデウムが何発もガリオニクスのキャノンに撃ち抜かれて倒れようとするが、すぐ後ろにいた別のメガデウムが背中を支えて走らせる。
一瞬──。
反乱軍部隊の目は、見ている景色が真っ白に。
帝国軍が火炎放射器を吹いていた。
視界を奪われる炎の壁が森を焼く。
だが反乱軍FBは燃えながら突破。
帝国軍陣地に乗りこむや、サンダーネイルが数機のダークウルフをまとめて引き裂く!
ヒボバンダスの規格外の顎門に挟まれたガリオニクスは、爆砕ボルトの同時起爆による凄まじい圧力の前に倒れる。
帝国軍が崩れた。
最重要ターゲットである……キリン型グランジラフは目の前だ。この勢いのままグランジラフを討つ!
反乱軍は自信に満ちていた。
それが間違いとも知らずに。
「これでも喰らえ!」
カノンリウム部隊が射線を通した。
全力の一斉射は、瞬間的であれば帝国軍の大半のFBよりすごいパワーだ。
グランジラフに集中攻撃!
「やったか!?」
煙のなかから回転鋸の音が聞こえてくる。
次の瞬間カノンリウム部隊が両断された。
燃える森のなか、赤い影に浮かび上がったグランジラフが細い足で、破壊されたカノンリウムを踏み潰す。
闘争本能あふれる反乱軍FBが、グランジラフを前に一瞬でも足を止めていた。
それが全てだった。
戦況を見守っていたナイトストーカーはひっそりと影のなかに隠れて、グランジラフの観察を続ける。
弱点は無さそうだ。
グランジラフを倒すのは難しく。
反乱軍精鋭部隊でも、壊滅した。
貴重な機材もこれ以上失えない。
原始的手段をとることにした。
新しい作戦のために反乱軍は、グランジラフをなんとしてでも倒そうと部隊をふたたび集結させる。
総力戦ではない。
それは失敗した。
大量のFBがあちこちに穴を掘る。
綺麗に穴を隠すと、剥がしていた土を戻し、水をまいて馴染ませた。さらに何日もかけて、下草が整い隠すのを待つ念のいれようだ。
他にも──。
工作部隊が連日連夜土木する。
川を堰き止めて水位をあげる。
比較的狭い川幅に沿って、廃材から木まで使って完全に堰き止めてしまった。
堰があるのはスコールが多い地域であり、数週間も経たないうちに高く築かれた堰でさえ今にもあふれそうなほど水がたまった。
正面からではグランジラフを倒せない。
ならば大自然ウルニアの肩を借りる!!
罠を幾つも張り巡らせた。
大型FBさえも超える大樹が、宙吊りにされているのを見上げながら工作部隊の隊長は次のフェイズに移行させる。
「…………囮部隊を放て」
そして、また、夜がきた。
帝国軍のガルオニクス部隊がいる──。
今のウルニアの森では珍しい光景ではないが、どうも様子がおかしい。
そこへ偶然、野戦整備場の周囲を警備しているダークウルフの部隊がはちあわせた。
奇妙なガリオニクス部隊に対して所属を訊く。
ガリオニクス部隊からは返事がない。
ダークウルフ部隊がガリオニクスに不信感を抱き、腹下のヴェノムスピアを向けようとした瞬間──キャノンに貫かれた。
ガリオニクスの砲口から白い煙がくゆる。
「気づかれたか?」
なんということだ!
ガリオニクスに乗っているのは反乱軍兵士!
彼らは、鹵獲したガリオニクスを利用して、帝国軍野戦整備場への攻撃を狙っているのだ!
標的は──修理中のグランジラフ!
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