新しい風を呼び込むカルロ王

王の体調が悪くなることが頻繁になり、ついにカルロに王位を譲るという発表がなされた。


国民たちは新しい王の樹立に期待を寄せる者が多かった。だが、問題は先代王と同じく保守的な思考を持つ大臣たちが問題であった。


「どの時代も新しい王の樹立時は、反発する者がいるものだ」


新しく王位に就いたカルロがそう言っていると、ヘンリーから聞いていた。


…………今日は王城にいつものごとくリリアンに呼ばれて来ていた。マティアスも一緒である。


「こんなバタバタした時に来てもらって申し訳ないな」

「いえ、むしろ逆だわ。大変な時に私たちを呼んでくれるなんてありがたいわ」

「ルイーズとマティアスの音楽は、オレとリリアンの癒しになっているからな」


ヘンリーがにこやかに言う。


「ヘンリー様が王様になったんじゃないから、そこまで忙しくないわよね」


リリアンが歯に衣着せぬ物言いをする。


「リリアン、オレも結構、気を使うことがたくさんあるんだぞ。ただでさえ、子どもも生まれそうなこの時期だ。オレがどれほど気を配っているか」

「うん、ごめんね。ヘンリー様がいいお父様になるのが楽しみ!」

「おう、まかせろ」


こんなやりとりをできいる2人は、いい組み合わせなのだろう。


「ヘンリー様も新しい政策に関わっているとお父様から聞いたわ」


(父も兄もカルロ様の側に仕えているのだから、新しい風は私たち公爵家にとって他人事ではないわ)


「オレは主に兄上の邪魔になるヤツを排除するような役割だな。適材適所だ」


ヘンリーは笑っているが、かなりその役目は大変だと思われた。


「カルロ様に対抗する勢力もあるという話も聞くわ。無理してはいけないと思うのだけど」


リリアンの前だからあまり突っ込んだことは言えないが、心配になって言った。


「大丈夫だ。.....さ、リリアン本日の胎教はおしまいだ。そろそろ部屋に戻るといい」


ヘンリーが侍女に部屋に送るように言いつけると、リリアンは眠いのかあくびをしながら部屋を出て行く。


(リリアン様はご自身のことで精いっぱいね。赤ちゃんがお腹にいるって大変なことなんだわ)


彼女はハチャメチャだが、お腹に宿る子どもに対する態度は母そのもので、子どもができるとあんなにも変わるものかと思わされる。人によるのだろうが。


「ヘンリー様、リリアン様が不安になるようなことを言ってごめんなさい」

「いや、彼女はさほど気にしていないと思うぞ。だが、お腹の子に差し障りがあると心配だから部屋に行かせたがな」


ルイーズの隣にはマティアスが座っていたが、彼はずっと大人しく座っている。


きっと、外国人の自分は黙っていた方が良いと考えているのだろう。


「ヘンリー様は本当にご立派になられたわ」

「なにを今さら改まって言う?オレは昔から武闘派だし、いずれこうなることを見込んで人脈も築いてきたつもりだ」


学園になかなか来なかったのも、街に出て歩いていたからだと聞いたことがある。


「昔はともかく、オレも父になるし子どもにとって行きやすい世の中にする手伝いをするつもりだよ」


自分も力になれることがあればぜひ、協力を惜しまないと伝えたのだった。


………それからしばらくして王位を継いだカルロは、古い大臣たちによる妨害もあったがヘンリーと共に新政権の安定に努めていた。


「カルロ様が隠された某公爵の血筋だったとか、ありもしないウワサをよく流すものね。信じられないわ」

「私も古い大臣の一人だが、新王を妨げる者は許さん。ヘンリー様と共に私も戦うまでだ!」

「僕も全力でカルロ様をお支えしていく!」


コルネ公爵家の男性陣も熱くなっている。


(カルロ様は新しいものを拒まず、力に変えられるお方――こんな革新的な考えを持つ方が新王になられるなんて、私も胸が熱くなる)


「東方諸国との関係にも今まで以上に力を入れるみたいね。言及はしていないけれど、音楽にも力を入れるみたいだわ」


メッツォから一定数、実力を認められた者はウイナ音楽院にも留学生を認めるらしかった。


これを聞いてレウルスの父がソワソワしているのだそうだ。


「父の年齢を考えると留学は難しいだろうが、多くの人の心を刺激する話にはなっているな」


フルンゼでもウイナの留学がもっぱらの話題になっているらしい。


(私もうかうかしていられないわ)


道が開かれた分、見識を深めるチャンスにもなり、ライバルが増えることにもつながる。


「マティアス、私たちの演奏会ももっと増やした方がいいのではないかしら?」

「そうだね」


マティアスは新王が樹立したことで、クリスティアンがメッツォに滞在しやすくなったことを喜んでいた。


彼らは離れていても手紙のやりとりをマメにしていて、遠距離恋愛を頑張っていたのであった。

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