王宮に響く心洗われるハーモニー
王宮での演奏会の日は早くもやってきた。
ヘンリーがすぐに王と王妃の予定を確認し、半ば強引に決めたのもあってすぐの開催となったのだ。
「練習をして2週間というところだけど、大丈夫かな……」
屋敷を出る前にマティアスが緊張していると、クリスティアンがマティアスの手にキスしていた。マティアスもクリスティアンにそっと頬にキスのお返しする。
その場にはルイーズとレウルス、クレメンテしかいないから誰もなにも言わない。
(......ディートマル人の印象アップのためにも、今日の演奏会を成功させなくちゃ)
「ルイーズ、肩に力が入っている。楽しむ気持ちで臨もう」
レウルスが肩に手を置く。
「ええ」
レウルスもボロゴの練習にそろそろ出発しなくてはならない時間だった。
「お互いに頑張りましょうね」
「ああ」
レウルスが出かけて行くと、ルイーズたちも王宮へとそろそろ出かける時間になった。
「僕らCCは屋敷にいるように言われている。王と王妃は僕たちがあまり好きではないみたいだからね」
「あなたたちへの印象が変わるように頑張ってくるわね」
「君たちなら心配いらないよ」
クリスティアンたちに見送られながら王宮へと向かったのだった。
...........城に着くと、ヘンリーが出迎えてくれた。
「調子はどうだ?」
「いいわ」
「そうか、なら行こう」
ヘンリーに連れられて、王族のプライベートな居間へと案内された。
「ここに来るのは......懐かしい」
ヘンリーの婚約者時代にここでよくお茶会をしていた。
「そうだな。あれから時が経ったのだな……」
なんとなく、しみじみした雰囲気になる。
「……ここで準備していてくれ。しばらくしたら父上と母上を連れて来る。兄夫妻とリリアンも来る予定だ」
王家の主要メンバーがほぼ勢ぞろいするとあって、急に緊張してきた。
(ふう、ダメよ。緊張したらいい演奏はできないわ)
マティアスと確認をしていると、王たちがやって来た。
王と王妃の表情が硬い。
「父上、母上、ルイーズと会うのは久しぶりですね」
ヘンリーが話しかける。
「そうね、トリアで自由気ままに過ごしていたようだけれど、結局はやはりメッツォの男性がいいと思ったのかしら?今さら息子と仲良くしようと思ったって遅すぎるわ」
「仲良く? お義母様、私の前でそんなことを言うのですか?ヒドイですわ!」
「リリアンのことは悪く思っていません。彼女に文句を言いたかっただけよ」
相変わらず、王妃はイジワルだった。そして、リリアンは思ったことをストレートに言うところは誰の前でも同じらしい。
「母上、古い話を持ち出さないで下さい。場がしらけます」
「ヘンリー、母である私にそんなことを言うのはおよしなさい」
「母上、ヘンリーも結婚してもう子どもではありませんよ」
「カルロまで、なんて冷たいことを言うの」
息子たちに諫められて王妃は機嫌がさらに悪くなる。王は、なにも言わず渋い顔をしたままだった。
「では、よろしく頼む」
ヘンリーに言われて、ルイーズはマティアスと目を合わせた。マティスの指が動く。
クラシックギターの静かな音色が今日も美しく響いた。
ルイーズも目を閉じると、音色に集中してバイオリンを奏でた。
かつて王たちの前で演奏した時よりも、はるかに洗練された演奏を披露できたという確信はある。
…………演奏が終わると、拍手が起きた。
驚くことに、王妃が涙を流していた。リリアンまでもが涙を流している。
「……クラシックギターの音色がこんなに良いものだとは思わなかったわ」
「私も。聴いた瞬間、私にも赤ちゃんにも必要な音色だって思いましたわ!」
(私のバイオリンには触れられていないけれど……)
彼女たちはマティアスに絶賛しているが、自分の演奏がどうだったのかが気になる。
「ルイーズ嬢の伸びやかなバイオリンの音色もクラシックギターと合ってとても良かった」
カルロ王子が言う。
「オレもルイーズのバイオリン演奏とクラシックギターの音色がとてもいいと思えた。以前よりも進化しているのが分かる」
カルロ王子とヘンリーはルイーズの評価もきちんとしてくれた。
「ありがとうございます。そう言って頂けるととても嬉しいですわ」
………王宮での演奏会以後、ルイーズとマティアスはしばしば王妃たちに呼ばれるようになった。
王妃はクラシックギターの音色がとても良い、とお気に入りの貴族に披露させたがり、リリアンにおいては胎教にいいと言って、毎日でも来るように言ってくる。
王妃とリリアンが気に入ったことで、ルイーズたちデュオは貴族たちにも知られる存在となったのだった。
「......王妃様たちが気に入って下さったおかげで、陛下もあからさまあなたたちを非難しなくなったわ」
「君たちのおかげだ。国に戻れ、と追い出されなくて良かった」
一応、気を揉んでいたらしいクリスティアンが安心した顔をした。マティアスがクリスティアンの手に自分の手を重ねている。
「国民たちも王室が自由な価値観に対して少し寛容になったと、捉えたのではないかしら」
「新しい世の幕開けだね」
メッツォが少しずつ変わる瞬間だった。
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